ピレウス(読み)ぴれうす(英語表記)Pireus

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ピレウス」の意味・わかりやすい解説

ピレウス
ぴれうす
Pireus

ギリシア南部、アッティカ県にある同国最大の港湾都市。ファリロン湾に臨み、首都アテネの外港で、大アテネ首都圏に含まれる。人口17万5697(2001)。「ピレウス」は現代ギリシア語の発音で、地名の綴(つづ)りPiraiéusを古代ギリシア語で発音すればピレエフスとなる。1834年アテネが首都となり港が再建されて以来発展を続け、現在ではギリシア第一の貿易港、商港としてだけでなく、工業都市としても重要。機械・化学工業、造船業を中心に一大工業地帯をなしている。主港(メガロ・リムニ)のカンタロスKantharosは、北西を小さなイエティオニア半島に、南をアクティ半島に挟まれ、その南東はムニキア(カステラ)の丘を経て本土に続く。この丘の南の麓(ふもと)にある小港(ミクロ・リマニ、別称トルコ・リマニ)は海産物レストランの建ち並ぶ観光街となっている。国内各地を結ぶ鉄道の終着駅で、アテネ中心部とは電車および高速道路で結ばれ、両市の間にも市街地が発達する。エーゲ海の主要な島々との海上交通の中心地。海軍兵学校、考古学博物館がある。

[真下とも子]

歴史

テミストクレスがアルコン筆頭の行政官)であったとき(紀元前493/492)、ファレロン(ファリロン)にかわる海軍基地として建設した。ゼア、ムニキア、カンタロスの3港からなり、突堤によって囲まれ、入口は鎖で閉鎖できるようになっていた。なかでもカンタロスは最大の港で、地中海貿易の中心地として、軍事施設のほかに取引所、倉庫なども建ち並んだ。町は前450年ごろミレトスのヒッポダモスの設計により整備され、その後、中心市アテネとは長城によって結ばれた。町には商工業者、在留外人などが多く居住し、ベンディス信仰など異国風の宗教も持ち込まれた。城壁は、前404年にスパルタの指揮官リサンドロスによって破壊されたが、前393年にはコノンにより再建された。前87~前86年にローマのスラの攻撃を受けて壊滅し、その後は19世紀まで十分な復興をみることはなかった。

中村 純]

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