2人以上の者が、他人の生命、身体または財産に対し共同して害を加える目的で集合した場合において、凶器を準備し、またはその準備があることを知って集合する罪(刑法208条の3第1項)。なおこの場合に、凶器を準備し、またはその準備があることを知って人を集合させる行為は凶器準備結集罪にあたる(刑法208条の3第2項)。
刑法208条の3は、1958年(昭和33)の刑法一部改正によって、暴力団の犯罪対策の一環として証人威迫罪(刑法105条の2)とともに新設されたが、その後、暴力団のほか、いわゆる過激派集団による集団的活動に対してしばしば用いられてきた。
本罪は、他人の生命・身体・財産に対する集団的加害を事前に防止するため、その予備的段階にある集合および結集を処罰するものである。したがって、立法の趣旨からすれば、本罪は個人法益に対する罪に属する。しかし、学説の一部や判例には、集団的加害による不特定または多数の生命・身体・財産に対する危険(公共の危険)を含み、この点での社会的不安を与えるとの理由から、社会法益に対する罪と解する見解がみられる。このような立場からは、本罪は騒乱罪(刑法106条)に実質的に近くなり、「小型騒乱罪」または「騒乱予備罪」としての機能を現実に営むことになる。
そこで、本罪の濫用を避けるために、とくに凶器の意義につき争いがある。通説・判例では、用法によって人の殺傷に利用しうる「用法上の凶器」も本罪の凶器に含まれると解されているから、たとえば一般の大衆行動で通常用いられる旗竿(はたざお)、プラカード、手拭(てぬぐい)といったものまで本罪の凶器にあたることになる。この不都合を避けるために、本罪の凶器とは、それ自体の外観からみてただちに他人を殺傷しうる物に限定すべきであり、旗竿等が現に人の殺傷に用いられた場合には、殺人、傷害、暴行の罪で処罰すれば足りると考えられる。
[名和鐵郎]
2人以上の者が,他人の生命,身体または財産に対して害を加える目的で集合した場合に,みずから凶器を準備しまたはその準備があることを知って集まること。2年以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられる(刑法208条の2-1項)。このような場合に,凶器を準備しまたは準備があることを知って集合させることも,3年以下の懲役として処罰される(凶器準備結集罪,同条2項)。これらの罪は,暴力団の抗争を具体的な殺傷事件などに発展する前に取り締まることを目的として,1958年に新設されたものであるが,60年代半ば以降,主として学生のデモの規制の手段として用いられるようになった。凶器準備集合罪が成立するためには,単に凶器を用意して集団に加わるだけでは足りず,その集団が,共同して害を加える目的で集合していることの認識が必要となる。また,本罪の解釈上最も問題となるのは凶器の意義で,銃・刀等の本来殺傷の用に供せられる物以外に,どこまで拡大しうるかが争われる。判例上,用い方によっては人の殺傷に役だついわゆる〈用法上の凶器〉として,バット,アイスピック,角材,鉄パイプ等が認められ,表現の自由との関係で慎重な取扱いを要するプラカードも,それでなぐりかかろうとした時点で凶器であるとされ,旗竿も,相手に向かって構えれば凶器性が認められる。
執筆者:前田 雅英
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…同条2項)。前者を凶器準備集合罪,後者を凶器準備結集罪といい,暴力犯対策の一環として1958年に新設されたものである。【町野 朔】。…
※「凶器準備集合罪」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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