人間の思考のあいまいさに枠組みを与えて推論・処理するための理論で、「非常に」「とても」「少し」などのファジー(ぼやけた)な概念による集合を取り扱う。ファジー集合は、要素が1と0で明確にくぎられた集合とは異なり、要素である状態から要素でない状態に徐々に移行している対象を取り扱い、個々の状態を「要素である度合い」に対応して0~1のメンバーシップ関数で表す。ファジー集合は従来の集合論と同様に互いに結合させることはできるが、結合時にはその要素の度合いを考慮して処理する。たとえばメンバーシップ関数と入力信号座標軸で囲まれた領域の和集合を求め、その重心を計算してシステムの出力を決定するなどであるが、ファジー理論における結合の解釈は状況依存的である。ファジー集合の数学的な基礎自体はあいまいなものではなく、1965年にアメリカのカリフォルニア大学教授のザデーLotfali Askar Zadeh(1921―2017)が提唱してから、ファジー位相空間、ファジー測度、ファジー群、ファジー確率変数、ファジー解析、ファジー安定論と、一般数学の見地から急速に発展した。日本では1972年(昭和47)に専門研究学会として「あいまいシステム研究会」が発足した(2003年「日本知能情報ファジィ学会」に名称変更)。
[岩田倫典]
今日のようにシステム規模が大きくなりすぎたり、人間的な要素が大きく入り込んでくるような状況では、ミクロな理論をいくら厳密に積み重ねても解決できない問題が生じてくる。そこで、従来の制御理論に比べると人間経験により近いことから、ファジー理論の実際的なマクロシステムへの応用が広く図られるようになった。1980年にデンマークのセメントキルン制御装置に応用されたのが最初とされるが、日本では1987年に開通した仙台市営地下鉄の制御に最初に適用されて大成功を収めた。以後、日本でファジー製品が増え、自動車の運転制御のほか、「人間に優しい」製品としてファジー洗濯機、掃除機、エアコン、扇風機、ビデオカメラの画像揺れ防止装置など、多くの家庭電気製品に応用され、ファジー・チップも商品化された。また、現在のデジタル・コンピュータでは扱うのがむずかしいあいまいな情報を扱い、より柔軟な情報処理を行うファジー・コンピュータの開発も行われ、さらに、人間の知的行動や、社会の状況の推移、自然現象、動植物の特性調査の手段としての利用や、医師の経験・知識を用いて総合判断する医療診断支援システムの開発などが試みられている。
[岩田倫典]
米テスラと低価格EVでシェアを広げる中国大手、比亜迪(BYD)が激しいトップ争いを繰り広げている。英調査会社グローバルデータによると、2023年の世界販売台数は約978万7千台。ガソリン車などを含む...
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