フィッシュポンプ(読み)ふぃっしゅぽんぷ(英語表記)fish pump

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フィッシュポンプ」の意味・わかりやすい解説

フィッシュポンプ
ふぃっしゅぽんぷ
fish pump

魚類を水とともに吸い上げ、漁獲または移送するために設計されたポンプの総称で、漁具としては副漁具にあたる。日本では魚を鮮魚として食用に供することが多く、魚体の損傷を少なくすることが望まれ、また比較的短時間に大量に移送するために考えられたもので、機構上次の3種類に大別することができる。(1)静止式容積タンク式 タンク内を真空ポンプで負圧にしながら水もろとも魚を吸い込み、ブロア(送風圧縮機)でタンク内を正圧にしながら圧送する。負圧または正圧のみで使用する方式もある。(2)ロータリー式 回転羽根がいわゆるブレードレスまたは二枚羽根型の構造で、その回転によって吸い込みと圧送を行う方式。(3)噴流式 ホースの途中に外部から高速の水または気体を流入させ、ホース内の魚を加速移送する方式で、いわゆる噴流吹き込み方式がこのタイプである。

 フィッシュポンプは、実際には次のような作業に用いられている。(1)漁場で水中の網の中から魚艙(ぎょそう)への魚の水揚げ。(2)漁船から運搬船へ、魚艙から魚艙への魚の移送。(3)岸壁で船から陸上への魚の陸揚げ。(4)加工場や魚市場内での魚の移送。(5)養殖場や活魚運搬船での活魚移送。

 また、現在フィッシュポンプが用いられているおもな漁業には、サンマ棒受網漁業、パッチ網漁業、小型定置網漁業などがあり、イワシアジサバ、サンマ、イカナゴウナギなどの多獲性魚類が対象になっている。

[添田秀男]

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改訂新版 世界大百科事典 「フィッシュポンプ」の意味・わかりやすい解説

フィッシュポンプ
fish pump

魚などを水とともに吸いあげて移送する装置。アメリカで1940年代に,缶詰工場の原魚のイワシやニシンを船から陸揚げするために開発されて成功をおさめ,次いで,海上で網に入った漁獲物を船倉に移すのにも使われるようになった。いずれも真空ポンプ型で,水は必要に応じて分離し,捨てたり元に戻す。新鮮なものほど水の量は少なくてよい。その後の改良により体長90cm程度のものまで,2~12t/minの速度で移送が可能となった。日本でも近年になり,サンマ棒受網漁船で漁獲物を船倉に移すのに用いられるようになった。ソ連では50年代にカスピ海でキーリカ(ニシンに似た小魚)を集魚灯で集めフィッシュポンプで漁獲する網なし漁法を開発し,年間10万tを漁獲したという。さらに,サンマにも同じ漁法を試験し,1時間で数t,最高9分間で1.5tの漁獲に成功している。しかし世界的に見て,フィッシュポンプを用いた網なし漁法は普及していない。
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