日本大百科全書(ニッポニカ) 「フィロストラトス」の意味・わかりやすい解説
フィロストラトス
ふぃろすとらとす
Philostratos
古代ギリシア、新ソフィスト時代の同名の4人の著述家。レムノス島出身の一族に属し、2~3世紀にかけて活躍した。第一のフィロストラトスについては不詳。著作も残存しない。その息子の第二のフラビオス・フィロストラトスFlavios P.(170ころ―?)がもっとも重要である。アテナイに学び、のちシリア皇帝セプティミウス・セウェルスとその妃ユリア・ドムナJulia Domna(170―217)の後援を受けるが、後年アテナイに定住したとも、ローマに赴いたとも伝えられる。1世紀ころのカッパドキアのテュアナの聖者でピタゴラス主義を信奉するアポロニオスの伝記『テュアナのアポロニオス伝』など神秘主義的、オリエント的傾向が顕著な書物その他があるが、とくに『ソフィスト伝』2巻が有名。同書は古典期のソフィストのみならず、彼と同時代に「ソフィスト」とよばれた学者たちの伝記を収め、ローマ帝政期のギリシア文化を知るうえに重要である。第三、第四のフィロストラトスには『絵画論』の名による弁論修辞術の習作集や恋を主題とした書簡集などがある。
[北嶋美雪 2015年1月20日]