日本大百科全書(ニッポニカ) 「フライターク」の意味・わかりやすい解説
フライターク
ふらいたーく
Gustav Freytag
(1816―1895)
ドイツの劇作家、小説家、ジャーナリスト。シュレージエンのクロイツブルク生まれ。ブレスラウ大学で学び、のちに同大学で講師を務めた。1848~70年、ライプツィヒで週刊誌『国境の使者』の共同編集者となり、急進主義を否定し、自由主義的な立場から新興中産階級が新たな国家建設の基盤であると主張、プロイセンによるドイツ統一を希求して多くの読者を得た。67~70年には北ドイツ議会で国民自由党の議員となった。プロイセン・フランス戦争には皇太子付きとして従軍。86年、枢密(すうみつ)顧問官に任ぜられたが、貴族の称号は辞退した。文学者としては「若きドイツ」の影響下に出発、作風は写実的である。政界・新聞界を描いた喜劇『ジャーナリスト』(初演1852)があるが、のちに小説に転じ『借り方と貸し方』(別名『アントン物語』1855)では台頭せる市民と斜陽貴族を対比、初期資本主義社会を描いた。文化史的労作『ドイツ過去の姿』(1859~67)を小説化した『先祖たち』(1872~80)は4世紀から1848年ころまでのドイツの生成過程を描いている。また『戯曲の技巧』(1863)は劇の五幕分割に根拠を与える典型的19世紀戯曲論である。
[佐々木直之輔]
『小堀甚二訳『アントン物語』(1943・有光社)』▽『菅原太郎訳『フライターク戯曲論』(1938・春陽堂)』▽『島村民蔵訳『戯曲の技巧』上下(岩波文庫)』