日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブリキの太鼓」の意味・わかりやすい解説
ブリキの太鼓
ぶりきのたいこ
Die Blechtrommel
ドイツの作家ギュンター・グラスの長編小説。1959年刊。精神科病院の患者オスカルが自分の半生を物語る回顧譚。3歳で地下室に転落して成長を停止したオスカルが、愛用のブリキの太鼓をたたき、破壊能力をもつ声を武器にして、ナチス時代のダンツィヒと戦後の西ドイツの混乱を生き抜く。小説全体は無数のエピソードの集積からなり、その奔放な着想と、機知とユーモアあふれる語り口で魅了しつつ、動乱の一時代全体を活写するのにみごとに成功している。79年フォルカー・シュレンドルフ監督により映画化され、カンヌ映画祭グランプリ、アメリカ・アカデミー外国語映画賞を受賞。
[宮原 朗]
『高本研一訳『ブリキの太鼓』全3冊(集英社文庫)』