ブルーニ(その他表記)Leonardo Bruni

改訂新版 世界大百科事典 「ブルーニ」の意味・わかりやすい解説

ブルーニ
Leonardo Bruni
生没年:1370-1444

イタリアの人文主義者,政治家。アレッツォに生まれ,フィレンツェラテン語サルターティギリシア語クリュソロラスに学び,デモステネスプラトンプルタルコスなどをラテン語に訳した。1405年ローマで教皇インノケンティウス7世の秘書となり,15年までその職にあった。さらに教皇ヨハネス23世がコンスタンス公会議(1414-18)に出席するのに同道,またマルティヌス5世使節もつとめた。1427年以降終身にわたって,フィレンツェの書記官長重責を果たした。歴代の書記官長と同じく,彼も地方の平民の出身であるが,フィレンツェに熱烈な愛国心を抱き,《フィレンツェ賛美》や《対話》の中で,当時ミラノの脅威にさらされていたフィレンツェの共和主義と市民意識の高揚ぶりを示している。また1404年までを扱った《フィレンツェ人民の歴史》は,見聞したことを重視し,歴史の中の〈自由〉のあり方をめぐって時代区分している点で,近代的な歴史意識の萌芽をもつ。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブルーニ」の意味・わかりやすい解説

ブルーニ(Leonardo Bruni)
ぶるーに
Leonardo Bruni
(1370―1444)

イタリアの人文主義者、歴史家、政治家。アレッツォに生まれる。ギリシア語をはじめ豊かな教養を身につけて、1417年から生涯フィレンツェ共和国の書記を務め、優れた才能を発揮する。暝想(めいそう)的理想(文化)と実践的理想(市民的義務への献身)の調和を図り、単なる博識ではなく、人間の生活とくに社会生活の完成に、文化の真の意味をみいだしている。その哲学は倫理的、実践的色彩が強く、人間は市民的活動、政治活動において、その尊厳を獲得するものであり、こうした人間の問題を解決するのが哲学であると考える。この見地からギリシア哲学者の倫理思想を検討し、キリスト教倫理との完全な一致を認める。『フィレンツェ人の歴史』12巻(1404~1610)など、没後にわたって刊行された優れた歴史書のほか、プラトン、アリストテレスなどの多くの著作をギリシア語から翻訳している。

[大谷啓治]


ブルーニ(Fyodor Antonovich Bruni)
ぶるーに
Фёдор Антонович Бруни/Fyodor Antonovich Bruni
(1799―1875)

ロシアの画家。イタリアのミラノ生まれのイタリア人だが、ロシアに帰化。ペテルブルグ美術アカデミーにおいてイワーノフおよびエゴロフに師事。イタリア留学(1838~41)ののち、ペテルブルグ美術アカデミーの教授、さらには学長になった。ローマで描いた『銅色の怪竜』(1825~41、サンクト・ペテルブルグ、ロシア美術館)は古典主義を代表する作品であるが、盲目的な信仰だけが人類を救うことができるという神秘主義に貫かれており、旧ソ連ではこの時代の反動性を示すものと批判された。しかし、イサク大寺院の壁画など多くの作品を残し、晩年は美術アカデミーの学長として、多くの画家たちを育てた。ソ連時代の評価は、彼の作品に表れている宗教性のために厳しいが、再評価される気運にある。

[木村 浩]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ブルーニ」の意味・わかりやすい解説

ブルーニ
Bruni, Leonardo

[生]1370頃. アレッツォ
[没]1444.3.9. フィレンツェ
イタリアの人文主義者,歴史家。Leonardo Aretinoとも呼ばれる。1405年教皇庁秘書,1427年フィレンツェの宰相。実証的な『フィレンツェ史』Historiarum Florentini Populi libri XIIをラテン語で著述した。ほかにギリシア古典のラテン語訳,ダンテとペトラルカの伝記などがある。

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世界大百科事典(旧版)内のブルーニの言及

【人文主義】より

…これは古典的人間教養とでも訳すべきもので,古典古代の文学的研究という側面と,よりよき人間を形成するための知識追究という側面とを兼備している。ブルーニは,これから勉学を始めようとする若者に,次のような励ましのことばを与えたが,それはフマニタス研究の本質を明快に表明している。〈研究とは君にとって二つのものであるべきです。…

【年代記】より

…13世紀中葉のM.パリスの《大年代記》は,その時代に全ヨーロッパで起こった政治的・社会的諸事件を扱い,きわめて包括的な時代史として,高く評価されている。14~15世紀のフィレンツェの繁栄と騒乱とを描いた,2人の年代記作者,ビラーニ(14世紀)とL.ブルーニ(15世紀)とは,従来の都市年代記のやや形式的な叙述とは違い,個性的な記述をもって知られている。また14世紀後半の百年戦争の時代に,フランス,イングランド両社会を見聞して書いたフロアサールの膨大な年代記は,封建社会の爛熟と混迷を描いて,文学作品としても高く評価されている。…

※「ブルーニ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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