日本大百科全書(ニッポニカ) 「ツノマタ」の意味・わかりやすい解説
ツノマタ
つのまた / 角叉
鹿角菜
[学] Chondrus ocelatus Holmes
紅藻植物、スギノリ科の多年生海藻。皮革質、扁平(へんぺい)の葉状体で、上体は2、3回叉(さ)状分岐をし、体表にクジャクの尾羽にある斑紋(はんもん)に似た円形斑紋が散在する。体色は紫紅色が基本ではあるが、紅藻類とは思えないほどに黄色や青緑色となるものもある。体形にも、分岐しないコマタ型や、大きく広開して葉縁にも側葉片をもつオオバツノマタ型などがあり、体色と体形は変化に富む。外海で荒波の当たる岩礁上、潮間帯に周年生育するが、分布は広く、日本沿岸のどこにでも産する。ツノマタは、日本では古くから知られてきた海藻の一つで、刺身のつまなどの食用とされるが、より以上に、含有する粘質物を漆食(しっくい)、壁土などの粘着剤として使用されてきた。こうした糊料(こりょう)的な用途に使われてきたものに北海道産のクロバギンナンソウがあるが、これは今日ではエゾツノマタC. yendoi Yamada et Mikamiの名で同属の仲間とされている。
ツノマタとよく似た和名の海藻としてコトジツノマタがある。コトジツノマタは、叉状分岐を3、4回繰り返し、細長い体形となる。名の由来は、先端部の形状が琴の弦を支える「琴柱(ことじ)」に似ることによる。分類のうえからみると、コトジツノマタは長い間C. elatusとされてきたが、現在では別属のGigartina elata Kim.に改められている。分布は伊豆半島以東、三陸沿岸までとやや限定される。コトジツノマタにはカラゲニンの含有量が多いため、パン、アイスクリームなどの食品加工用天然物としての用途が拡大している。なお、欧米での寒天製造主原料は古くからトチャカに似たIrish moss./C. crispus Stackhouseが使われているが、これはツノマタと同属である。形状はコトジツノマタに似ており、分布域は北部大西洋の東西両岸と広い。
[新崎盛敏]