硬石膏(読み)コウセッコウ(英語表記)anhydrite

翻訳|anhydrite

デジタル大辞泉 「硬石膏」の意味・読み・例文・類語

こう‐せっこう〔カウセキカウ〕【硬石×膏】

硫酸カルシウム無水物からなる鉱物斜方晶系に属し、ふつう、無色または白色。塊状・粒状・板状で産する。

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精選版 日本国語大辞典 「硬石膏」の意味・読み・例文・類語

こう‐せっこうカウセキカウ【硬石膏】

  1. 〘 名詞 〙 天然に産する無水の石膏。普通の石膏よりかたい。化学式は CaSO4 プラスター、白墨硫安などの原料。〔鉱物字彙(1890)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「硬石膏」の意味・わかりやすい解説

硬石膏
こうせっこう
anhydrite

無水硫酸カルシウムの鉱物。日本では黒鉱鉱床中に産するほか、ある種の安山岩、含銅硫化鉄鉱床、接触交代鉱床スカルン型鉱床)中に産する。外国では岩塩鉱床に伴われて堆積(たいせき)岩を構成するほか、スモーカー(熱水からの沈殿物が堆積した煙突状の構造物)周辺の堆積物中に含まれることもある。塊状を呈することが多いが、再結晶して劈開(へきかい)片の大きく発達した結晶となりやすい。日本のおもな産地としては、秋田県大館(おおだて)市花岡鉱山(閉山)、同小坂町小坂鉱山(閉山)、茨城県日立市日立鉱山(閉山)などのほか、秋田県駒ヶ岳(こまがたけ)の安山岩中からも報告されている。自形斜方板状であるが、日本ではまれ。石膏とよく共存する。英名はギリシア語の「無水物」に由来する。石膏という一般的に知られている物質を加熱すると水分が抜けて硬石膏と同じ物質になることが確かめられていたためである。

[加藤 昭 2016年8月19日]


硬石膏(データノート)
こうせっこうでーたのーと

硬石膏
 英名    anhydrite
 化学式   Ca[SO4
 少量成分  Sr
 結晶系   斜方(直方
 硬度    3.5
 比重    2.95
 色     白,淡青紫,灰
 光沢    ガラス
 条痕    白
 劈開    二方向に完全~ほぼ完全
       一方向に良好
       (「劈開」の項目を参照

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化学辞典 第2版 「硬石膏」の解説

硬セッコウ
コウセッコウ
anhydrite

鉱物名で硫酸塩鉱物の一種.化学的には硫酸カルシウム無水物のことであり,無水セッコウ焼殺セッコウ(dead burnt gypsum)ともいう.セッコウ(CaSO4・2H2O,gypsum)を130 ℃ に加熱して得られる0.5水和物(CaSO4・0.5H2O)を焼きセッコウ(plaster of Paris)といい,200 ℃ まで加熱して無水物としたもの(γ-CaSO4)が硬セッコウである.焼きセッコウは水で練ると発熱してもとのセッコウに戻り硬化するが,硬セッコウは水硬性がなく,水で練ってもセッコウに戻らない.セッコウは吸熱脱水と水蒸気の発生で火力を弱めるので,しっくいとして防火材に使えるが,硬セッコウは無水物であるのでこれには使えない.白墨(チョーク)に利用される.[CAS 7778-18-9:CaSO4][CAS 10101-41-4:CaSO4・2H2O][CAS 10034-76-1:CaSO4・0.5H2O]

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百科事典マイペディア 「硬石膏」の意味・わかりやすい解説

硬セッコウ(石膏)【こうせっこう】

セッコウの無水物。成分は硫酸カルシウムCaSO4。斜方晶系の柱状または板状結晶で,普通は塊状,粒状で産出。モース硬度3〜3.5,比重3.0。真珠光沢,脂肪光沢があり,白色,ときに帯灰・帯紅・帯青色を示す。セッコウ,石灰岩,白雲石(ドロマイト)などに伴って堆積層中に広く分布。水を吸収してセッコウとなる。微粉砕しミョウバンなどの硬化促進剤を加えたものは硬セッコウプラスターとして壁材料などに,緻密(ちみつ)なものは装飾用に使用。
→関連項目キャップロックプラスター

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改訂新版 世界大百科事典 「硬石膏」の意味・わかりやすい解説

硬セッコウ(石膏) (こうせっこう)
anhydrite

化学成分はCaSO4でセッコウの無水物に相当する鉱物。セッコウより硬いのでこの名前がついた。斜方晶系。板状や柱状の結晶として産出することもあるが,ふつうは塊状,粒状,繊維状などをなして産出する。無色,白色,灰色,淡青色など。光沢は面によって異なる。モース硬度3~3.5,比重3.0。水を吸うとセッコウになる。岩塩,カリ岩塩などを主とする蒸発岩の構成鉱物で,塩湖が干上がる時に最初に析出沈殿したもので,セッコウと共生することが多い。温度が42℃以上で蒸発した時や,そうでなくても高塩分の時に析出する。また熱水鉱脈中にも産する。セッコウの製造や彫刻用として用いる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「硬石膏」の意味・わかりやすい解説

硬石膏
こうせっこう
anhydrite

CaSO4 。斜方晶系に属する鉱物。無水石膏ともいう。硬度3~3.5,比重 2.90~2.99。白,灰白,帯青,帯紫色。真珠または脂肪光沢。加水により石膏 CaSO4・2H2O になる。純水中では 57℃以上で安定。塩湖の蒸発などにより生成した岩塩鉱床や石膏鉱床に大規模に産する。

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