翻訳|Danae
ギリシア伝説で,アルゴス王アクリシオスAkrisiosの娘。英雄ペルセウスの母。ダナエの生む子は祖父を殺すであろうとの神託がアクリシオスにあったため,彼女は父王によって青銅の部屋に閉じ込められていたが,ゼウスが黄金の雨に身を変じて彼女を訪れ,やがてダナエはペルセウスを生んだ。困惑した王はダナエ母子を箱に入れて海に流すと,箱はセリフォス島に漂着し,二人は島の王ポリュデクテスPolydektēsの弟に保護された。その後,成人したペルセウスが王命で女怪ゴルゴン退治に出かけている間に,ダナエはポリュデクテスに言い寄られて窮地に陥ったが,折よくペルセウスが生還し,メドゥーサの首を見せて王を石に変えた。このあとダナエは息子に伴われて故郷のアルゴスに帰ったという。ゼウスの訪問を受けるダナエは,ルネサンス期の画家に最も愛好された画題の一つで,ティツィアーノ,コレッジョ,ティントレットらの作品がよく知られている。
執筆者:水谷 智洋
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ギリシア神話のアルゴス王アクリシオスの娘。すでに高齢であった父アクリシオスは、男子が生まれるのを切望していたが、デルフォイの神託から自分がダナエの生む男の子に殺されることを知らされる。そこでダナエを青銅の部屋に閉じ込めるが、ダナエに恋慕していたゼウスが黄金の雨に身を変じて部屋の屋根から侵入し、彼女にペルセウスを生ませる。嬰児(えいじ)がゼウスの子であることを信じないアクリシオスは、母子を箱に封じ込めて海へ投げ入れ、その箱はセリフォスの島へ漂着して島の王ポリデクテスの弟ディクテス(「網」の意)に救われる。しかし、ポリデクテスはペルセウスをゴルゴン退治に行かせておいて、ダナエを自分のものにしようとした。そのため帰国して母の苦境を知ったペルセウスは、ポリデクテスとその一味にゴルゴンの頭を見せ、彼らをことごとく石にしてしまった。ダナエの受難物語は悲劇の素材にもなっているが、箱の中のダナエが嬰児ペルセウスをあやす姿を歌ったシモニデスの哀歌は、とくに有名である。
[伊藤照夫]
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…言語・措辞はステシコロス以来の伝統に従うものであったが,律格の面では必ずしも同一の傾向であったとは認められない。シモニデスの特色は,《ダナエ》断片からうかがわれるように優美な色彩感覚と映像性を伴う憂愁を抒情的に語るとき,あるいはまた《スコパスへの歌》に現れるような厳粛な人間観を格言まじりの平易な言葉で語るとき,特に著しいと思われる。〈絵画は物いわぬ詩,詩は物語る絵画〉というシモニデスの言葉は,彼自身の詩文の理想であったのかもしれない。…
…ゼウスは人間の女との間にも多数の子をもうける。主要なものだけを挙げれば,テーバイの王女セメレSemelēによりディオニュソスを,アルクメネAlkmēnēによりヘラクレス,ダナエDanaēによりペルセウス,エウロペによりミノスを得た。それぞれの場合につき細目と関与者を特徴づける物語が語られている。…
… 神が人間と結婚する形式の聖婚神話(伝説)は,英雄の生誕(英雄神話)や特定家系の由来を基礎づけていることが多い。ギリシア神話では,アルゴス王アクリシオスAkrisiosは一人娘ダナエDanaēを青銅の密室のなかに隔離していたが,大神ゼウスは黄金の雨となってダナエと通じ,2人の間に英雄ペルセウスが生まれた。日本では大和の三輪山の大物主神が活玉依毘売(いくたまよりびめ)に毎夜通って生ませた子の子孫が河内の美努(みぬ)村の意富多多泥古(おほたたねこ)であって,崇神天皇はそれに三輪山の神をまつらせたという。…
…ゼウスは人間の女との間にも多数の子をもうける。主要なものだけを挙げれば,テーバイの王女セメレSemelēによりディオニュソスを,アルクメネAlkmēnēによりヘラクレス,ダナエDanaēによりペルセウス,エウロペによりミノスを得た。それぞれの場合につき細目と関与者を特徴づける物語が語られている。…
… 神が人間と結婚する形式の聖婚神話(伝説)は,英雄の生誕(英雄神話)や特定家系の由来を基礎づけていることが多い。ギリシア神話では,アルゴス王アクリシオスAkrisiosは一人娘ダナエDanaēを青銅の密室のなかに隔離していたが,大神ゼウスは黄金の雨となってダナエと通じ,2人の間に英雄ペルセウスが生まれた。日本では大和の三輪山の大物主神が活玉依毘売(いくたまよりびめ)に毎夜通って生ませた子の子孫が河内の美努(みぬ)村の意富多多泥古(おほたたねこ)であって,崇神天皇はそれに三輪山の神をまつらせたという。…
※「ダナエ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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