日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベストフーズ」の意味・わかりやすい解説
ベストフーズ
べすとふーず
Bestfoods Inc.
アメリカの世界的な食品メーカーとして知られたが、2000年イギリス・オランダ系大手食品・日用品メーカーのユニリーバに買収され、その傘下に入り、ユニリーバ・ベストフーズに社名変更した。ユニリーバの食品事業部門を構成している。
1959年、トウモロコシ精製会社のコーン・プロダクツ・リファイニングCorn Products Refining Co.(1906年設立)と食品会社のザ・ベスト・フーズThe Best Foods, Inc.(1932年設立)が合併して、CPCインターナショナルの前身であるコーン・プロダクツCorn Products Co.が設立された。コーン・プロダクツ・リファイニング社はトウモロコシ精製のほか、簡易スープミックスのクノールKnorr(1873年より販売)で有名なドイツのC・H・クノール社の株式を所有していた。ザ・ベスト・フーズ社はピーナッツバター製品のスキッピイSkippy、マヨネーズのベストフーズ、ヘルマンズHellman'sなどの商標名で広く知られていた。両社合併後のコーン・プロダクツの売上高は1966年には10億ドルを超えた。国外活動は、1967年にベルギーのブリュッセル、香港(ホンコン)、アルゼンチンのブエノス・アイレスに本部を設置。1969年に社名をCPCインターナショナルに改称した。
CPCインターナショナルは設立以来、マヨネーズ、コーン油、コーンスターチ、ピーナッツバター、シロップなどの最終製品(消費者向け製品)を製造するベストフーズ事業部と、トウモロコシの加工を行うコーンプロダクツ事業部の2部門をおもな柱に事業展開を行った。同社は1980年代後半より事業の再編成に着手し、1987年にヨーロッパ地域のトウモロコシ加工部門をイタリアの食品大手フェルッジFerruzziに6億ドルで売却。1986年から1995年にかけて20か国以上で50を超える消費者向け製品ビジネスを展開し、とくに1991年以降は中国、ベトナム、ロシア、東欧諸国などにも進出してブランド食品を中心とした最終製品事業に特化していった。1998年、トウモロコシ加工部門をコーン・プロダクツ・インターナショナルCorn Products International, Inc.として分離独立させ、社名をCPCインターナショナルからベストフーズに改称した。同年、南アフリカでベストフーズ・ブランドの販売権をもつコンソリデーテッド・グロサリー・プロダクツ社(CGP)と、アフリカ地域、イスラエルを販売対象に、ベストフーズの商標を用いたジョイント・ベンチャー(合弁事業)を開始した。また、1999年にはインド、パキスタンで調味料のブランド販売を始めるなど、ベストフーズは最終製品の製造・販売を事業の中心にすえて再スタートを切った。ベストフーズの1999年の売上高は86億3700万ドル、純利益は7億1700万ドル。同社製品の60%以上は国外で販売され、北アメリカ、ヨーロッパ、中南米、アジアの60か国以上で事業が展開された。
しかし、2000年にはベストフーズのもつ優良ブランドの取得をねらったユニリーバが買収・合併を提案、最終的に総額243億ドルの買収提案を受け入れ、同年10月に紅茶の「リプトン」をはじめとするユニリーバの食品事業に統合された。ユニリーバ食品部門の2001年の売上高は257億0700万ドル(総売上げの55%)。
日本では社名よりも、クノールやスキッピイなどの商標名で知られる。1963年(昭和38)に設立された味の素(もと)との折半出資によるクノール食品(1987年より味の素の完全子会社)などを通じて販売されている。味の素は1988年スキッピイの総販売元となった。
[萩原伸次郎]