マーガリン(英語表記)margarine

翻訳|margarine

デジタル大辞泉 「マーガリン」の意味・読み・例文・類語

マーガリン(margarine)

大豆油綿実めんじつなどを原料とし、食塩・乳化剤・香料・着色料などを練り合わせ、バター状に仕上げた食品。1869年にフランスで初めて製造。人造バター

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「マーガリン」の意味・読み・例文・類語

マーガリン

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語・フランス語] margarine ) 人造バター。一八六九年フランスで天然バターの代用品として発明された。原料は大豆油、綿実油などで、牛脂や鯨油を加えることもある。
    1. [初出の実例]「ミルクホールで〈略〉出す厭な臭いのするマアガリン」(出典:明治大正見聞史(1926)〈生方敏郎〉憲法発布と日清戦争)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「マーガリン」の意味・わかりやすい解説

マーガリン
margarine

食用油脂発酵乳,食塩などを加えて乳化し,練り合わせてバターのような製品にしたもの。バターの代用品として,1869年に,ナポレオン3世の懸賞募集に応じたフランス人メージュ・ムーリエH.Mège-Mouriès(1817-80)によって発明された。マーガリンの語源はギリシア語margaritēsで〈真珠〉の意であるが,乳化の色が真珠の色に似ていることに由来するといわれる。日本で最初に製造されたのは1908年であるが,当初は人造バターの名で呼ばれた。最近は品質の改良が進んで,消費量は増加している。

原料油脂としては動物油脂(牛脂,豚脂,硬化した魚油・鯨油),植物脂(ヤシ油,パーム油,パーム核油の精製油または硬化油),植物油(ダイズ油,綿実油,トウモロコシ(コーン)油,ベニバナサフラワー)油,ナタネ油の精製油または硬化油)などが用いられる。家庭用マーガリンの原料にはほとんど動物油脂を用いない。ソフトタイプのマーガリンでは硬化油の割合を減らし,植物油を多く配合する。とくに,必須脂肪酸であるリノール酸を多く含むマーガリンの製造にはダイズ油,綿実油,米油,ベニバナ油がおもに使用される。脱脂乳または発酵乳の使用は,製品の風味をよくするだけでなく,油脂やビタミンAの安定化に役だっている。製造は,原料配合,乳化,急冷,練合せ,成形包装の工程で行われる。二つの配合槽を用い,原料油脂,着色料,乳化剤,ビタミンAなどの油に溶ける成分と,発酵乳,食塩などの水に溶ける成分を別々に混合してから乳化槽に入れてかくはん混合する。これを10~15℃に急冷して固化させ,十分に練り合わせて滑らかな製品にする。乳化,急冷,練合せの工程は密閉型の連続式製造装置で行われる。

成分組成は油脂80%以上,水分16~18%である。バターに比べて次のような特徴がある。(1)原料油脂の配合を変えることにより融点の異なる製品ができる。冷蔵庫でも固くならない低融点の製品や,夏季用の融点の高い製品など,バターより使いやすい。(2)価格が安い。(3)植物油を用いた製品ではコレステロールを含まず,必須脂肪酸であるリノール酸が多いので栄養上優れている。(4)強化マーガリンではバターの2倍以上のビタミンA効力を有する。

保存温度が高いときには油脂の酸敗,ビタミンAの破壊,カビの繁殖などの変質が起こる。とくに,家庭用マーガリンでは,保存料や酸化防止剤は通常使用されておらず,またソフトタイプのマーガリンでは液状植物油が多く使用されているので,その不飽和脂肪酸が酸化されやすい。つねに10℃以下の,温度の低い場所に,空気に触れないよう密閉した容器に入れて保存するのがよい。
執筆者:


出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「マーガリン」の意味・わかりやすい解説

マーガリン
まーがりん
margarine

食用油脂に、水、乳化剤などを加え、バター状に練り合わせた加工油脂。人造バターともいう。フランスのナポレオン3世が募集したバターの代用品として、化学者メージュ・ムーリエHippolyte Mège Mouriés(1817―80)が考案し、1869年にイギリス、フランスの特許を得たことに始まる。その語源はギリシア語のマーガライトmargaritēs(真珠)で、乳化したものの色が似ていることに由来する。日本では1908年(明治41)に横浜の山口八十八商店が初めて製造し、長い間「人造バター」といわれたが、1950年(昭和25)ごろから技術の改良が進み、広く普及するようになった。55年ごろから健康志向の純植物性のものが、68年ごろからソフト型のものが商品化された。

[新沼杏二・河野友美・山口米子]

製法と種類

綿実(めんじつ)、やし、大豆、コーンなどの植物性油脂だけか、それに牛脂、鯨油または魚硬化油などの動物性油脂を混ぜ、少量の水と食塩、脱脂乳、発酵乳などの乳製品、乳化剤、脂溶性ビタミン(A、D)、香料、着色料などを添加し、攪拌(かくはん)乳化させて、50℃ぐらいから急速に10℃程度に冷却して、油脂の大部分を固体化させて練り合わせる。

 JAS(ジャス)(日本農林規格)では油分によって80%以上をマーガリン、75~80%を調整マーガリン、75%未満をファットスプレッドと区分し、まとめて「マーガリン類」として規定している。

[新沼杏二・河野友美・山口米子]

利用

ソフト型は不飽和脂肪酸が多いので、酸化されやすい性質をもつ。新しいものを、加熱しないで用いるのがよい。調理においてはソテー、ケーキなどのように加熱する場合は、バターを用いたもののほうが香りの点で勝る。

[新沼杏二・河野友美・山口米子]

『新谷勛著『食品油脂の科学』(1989・幸書房)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マーガリン」の意味・わかりやすい解説

マーガリン
margarine

動物油脂植物油脂などを加工した脂肪性食品。精製した動植物油とその硬化油を適当な割合に混合し,これに乳化剤香料,色素,食塩水,発酵乳などを加えて攪拌,乳化して製造する。1860年代末にフランスの化学者 H.メージュ=ムリエが,バターの代用品として開発した。日本では 1908年に最初に製造され,当初は人造バターと呼ばれた。原料としては,大豆油落花生油綿実油,トウモロコシ油,パーム油などの植物油脂を主体にしたものが多い。アメリカ合衆国では,酪農産業からの圧力により当初は法規制の対象となっていたが,1930年代に原料をアメリカ国内産の植物油脂に転換してのち,徐々に規制が緩和された。バターと比べ生産量が多く,値段が安い。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

化学辞典 第2版 「マーガリン」の解説

マーガリン
マーガリン
margarine

人造バターともいわれ,油脂加工製品の代表的なもので,バターに代用される食品.主成分であるヘッド,ラード,植物油脂または硬化油にカロテンなどの色素,レシチン,食塩など,またあるものは牛乳,バターなども加えて,まぜてつくる.普通,夏と冬とで脂肪の混合割合をかえて,適温で溶けるように調整する.日本農林規格によれば,油分80% 以上,水分17% 以上であることとされている.バターに比べて高級脂肪酸が多く揮発性酸の分量が少ない.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

百科事典マイペディア 「マーガリン」の意味・わかりやすい解説

マーガリン

動植物の油脂,硬化油からつくった人造バター。現在は遊離脂肪酸の中和や脱臭,脱色をした良質の植物硬化油を原料とすることが多い。これに発酵乳,食塩,乳化剤,香料,色素,ビタミンA,Dなどを加えて乳化し,のち急速に冷却して練り,バター状に製する。19世紀末からつくられ,当初は代用品の域を出なかったが,今日のものは風味,栄養ともバターに匹敵。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

栄養・生化学辞典 「マーガリン」の解説

マーガリン

 人造バターともいった.もとバターの代替品として作られたが,近年は独自の特性のある食品とされるようになっている.油脂を乳化して製造したペースト状のもので,パンなどに塗って食べる.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

今日のキーワード

世界の電気自動車市場

米テスラと低価格EVでシェアを広げる中国大手、比亜迪(BYD)が激しいトップ争いを繰り広げている。英調査会社グローバルデータによると、2023年の世界販売台数は約978万7千台。ガソリン車などを含む...

世界の電気自動車市場の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android