ベックリン(読み)べっくりん(英語表記)Arnold Böcklin

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベックリン」の意味・わかりやすい解説

ベックリン
べっくりん
Arnold Böcklin
(1827―1901)

スイス画家。10月16日バーゼルに生まれ、1845年デュッセルドルフ美術学校のJ・W・シルマーについて学ぶ。以後アントウェルペン、ブリュッセル、そしてジュネーブでは風景画家カラムAlexandre Calame(1810―64)のもとで修業。48年のパリ旅行から各地を巡り、50~57年ローマに滞在。ここで風景と神話に取材した作品を制作する。59年ミュンヘンで催した作品展で『葦(あし)のなかのパン』(ミュンヘン、ノイエ・ピナコテーク)が物議を醸す。60~62年ワイマール美術学校で教えるが、再度イタリアに赴く。その後バーゼル、ミュンヘン、チューリヒに2、3年ずつ滞在した以外はフィレンツェで過ごし、1901年1月16日同近郊のフィエーゾレ死去。彼は風景画から出発して神話に由来する象徴、幻想の画風に移り、印象派とは対極的な世界を開拓した。『死の島』(1880・バーゼル美術館)などのほか自画像も多く、『死と一緒の自画像』(ベルリン、ナショナル・ギャラリー)はこの分野の代表作である。

[野村太郎]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ベックリン」の意味・わかりやすい解説

ベックリン
Böcklin, Arnold

[生]1827.10.16. バーゼル
[没]1901.1.16. フィレンツェ近郊フィエーゾレ
スイスの画家。 1845~47年ジュッセルドルフの美術学校に学んだのち,ジュネーブの A.カラムに師事。 48年パリに旅行,50~57年ローマに滞在。 58~61年ワイマールの美術学校で教え,66年まで再びローマで過した。 71~74年ミュンヘンに移り,74~85年フィレンツェ,85~92年チューリヒ,最晩年をフィレンツェ郊外でおくった。初期はロマン主義的な風景画を制作。 65年頃から伝統的様式と印象主義を融合して幻想的,象徴主義的な独特の画風を確立し,神話,伝説に取材した象徴的作品を残し,ドイツのミュンヘン派に影響を与えた。主要作品『死者の島』 (1880,バーゼル美術館) は S.ラフマニノフの同名の交響詩作曲の動機となった。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

お手玉

世界各地で古くから行われている遊戯の一つ。日本では,小豆,米,じゅず玉などを小袋に詰め,5~7個の袋を組として,これらを連続して空中に投げ上げ,落さないように両手または片手で取りさばき,投げ玉の数や継...

お手玉の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android