ペッカリー(読み)ぺっかりー(英語表記)peccary

翻訳|peccary

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ペッカリー」の意味・わかりやすい解説

ペッカリー
ぺっかりー
peccary

哺乳(ほにゅう)綱偶蹄(ぐうてい)目ペッカリー科に属する動物の総称。この科Tayassuidaeの仲間は、南・北アメリカに分布するイノシシに似た動物で、背に油状の分泌物を出す腺(せん)をもち、それをへそに見立ててヘソイノシシともよばれる。外観はイノシシに似るが、後肢の第5趾(し)が退化して3趾に近くなっていることや、歯数もイノシシの44本に対し前臼歯(きゅうし)が4本少ない40本である点などに違いがみられる。背部にある腺から出る分泌物はマーキングに用いられ、草木や木の根などに塗り付けられる。群れをなして暮らし、キノコ、根、果実などをあさるほか、バッタ、甲虫、幼虫爬虫(はちゅう)類、死肉など動物質も食べる。活動時間は、夏季は早朝と夕刻で、冬季にはとくに時間を選ばない。定まった発情期は認められず、1産1~2子を140~150日の妊娠期間ののちに分娩(ぶんべん)する。雌はほぼ8か月、雄は約11か月で性成熟する。

 本科には、クビワペッカリーTayassu tajacuクチジロペッカリーT. albirostrisの2種がある。クビワペッカリーは灰黒色の地に肩部から胸にかけて黄白色の帯状模様がある。体長75~100センチメートル、肩高55センチメートル、体重18~30キログラム。北アメリカ南部からパタゴニア南部にわたる砂漠地帯や森林に、5、6頭から十数頭の群れで暮らす。14亜種がある。クチジロペッカリーはやや大形で、体長113センチメートル、体重25~30キログラム。体色は灰黒色から黒褐色。口の周囲、頬(ほお)、のどなどが白色。100頭以上の大群をなして森で暮らす。5亜種があり、メキシコ南部からパラグアイに分布する。

増井光子

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ペッカリー」の意味・わかりやすい解説

ペッカリー
Tayassuidae; peccary

偶蹄目ペッカリー科に属する動物の総称。体長 75~90cm,体重 15~30kg。尾はほとんどない。外見はイノシシに似るが,後肢の小指は退化して3指になっており,歯の数もイノシシより少い。背面脂液を分泌する腺をもち,これを臍 (へそ) に見立ててヘソイノシシともいう。警戒するとき,腺のあるところの背毛を直立させて,麝香 (じゃこう) に似た臭いの液を分泌する。南・北アメリカに分布し,30~35頭あるいはそれ以上の群れで移動する。クビワペッカリー Tayassu tajacu,クチジロペッカリー T. pecariの2種から成る。

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