ペルオキソ硫酸(読み)ぺるおきそりゅうさん(その他表記)peroxosulfuric acid

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ペルオキソ硫酸」の意味・わかりやすい解説

ペルオキソ硫酸
ぺるおきそりゅうさん
peroxosulfuric acid

ペルオキソ一硫酸H2SO5式量114.1とペルオキソ二硫酸H2S2O8、式量194.1とがあり、普通はペルオキソ二硫酸をいう。

 いずれも無色吸湿性結晶であるが、水に溶けて強い酸であり、分解して硫酸と過酸化水素になる。エタノールエーテルに溶ける。水溶液中ではデータノートの図にあるようなイオンがあり、硫酸イオンのO2-をO22-で置換したものである。

 クロロ硫酸HSO3Cl水溶液と過酸化水素とを反応させ、生じた塩化水素を除いて溶液を冷却すると結晶として得られる。普通はペルオキソ硫酸カリウムを濃硫酸で分解して水溶液として得られる。純粋なものはいくぶん安定であるが、不純であると分解しやすく、強い酸化剤である。

[中原勝儼]


ペルオキソ硫酸(データノート)
ぺるおきそりゅうさんでーたのーと

ペルオキソ硫酸
ペルオキソ一硫酸

 化学式 H2SO5
 式量  114.1
 融点  45℃(分解)

ペルオキソ二硫酸

 化学式 H2S2O8
 式量  194.1
 融点  65℃(分解)
 比重  1.30(0℃)

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「ペルオキソ硫酸」の意味・わかりやすい解説

ペルオキソ硫酸 (ペルオキソりゅうさん)
peroxosulfuric acid

ペルオキソ一硫酸とペルオキソ二硫酸が知られている。過硫酸と呼ぶのは誤称

(1)ペルオキソ一硫酸peroxomonosulfuric acidH2SO5は,ペルオキソ二硫酸の加水分解,あるいはクロロ硫酸HSO3Clと理論量の過酸化水素H2O2を反応させて得られる。無色吸湿性の結晶。融点45℃。カロー酸Caro's acidとも呼ばれている。

(2)ペルオキソ二硫酸peroxodisulfuric acidH2S2O8は,冷却したクロロ硫酸に理論量の過酸化水素を加えて反応させた後,減圧下で温めて塩酸を取り除いてから結晶化してつくる。無色吸湿性結晶。融点約65℃(分解)。水に入れると音をたてて溶けて分解する。

 一般式M2S2O8(M1=Na,K,NH4,1/2Pb,1/2Baなど)で示される多くのペルオキソ二硫酸塩が知られている。これらは主として硫酸塩水溶液を電解酸化して得られる。ペルオキソ二硫酸イオンは,O3-S-O-O-S-O3の構造をもち,各硫黄原子は4個の酸素原子によって正四面体形にとりまかれている。最も強力な酸化剤の一つであり,Mn,Crを,それぞれ強い酸化力を有する過マンガン酸イオンMnO4⁻およびクロム酸イオンCrO42⁻に酸化することができる。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ペルオキソ硫酸」の意味・わかりやすい解説

ペルオキソ硫酸
ペルオキソりゅうさん
peroxosulfuric acid

過酸化硫酸ともいう。過硫酸は誤称である。 (1) ペルオキソ一硫酸 化学式 H2SO5 。無色,吸湿性の結晶。融点 45℃,アルコール,エーテル,酢酸に易溶。ベンゼン,フェノールなどの有機物を爆発的に酸化するなど,強い酸化力をもつ。ペルオキソ二硫酸の加水分解によって得られる。 (2) ペルオキソ二硫酸 化学式 H2S2O8 。無色,吸湿性の結晶,融点 65℃。ペルオキソ一硫酸と同様に酸化力が大きい。濃硫酸の電解によって得られる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android