改訂新版 世界大百科事典 「ローマ楽派」の意味・わかりやすい解説
ローマ楽派 (ローマがくは)
scuola romana[イタリア]
主として,16世紀後半から17世紀前期にかけて,ローマを中心に,厳格な〈ア・カペラ〉様式の教会音楽を作曲した一群の音楽家をいう。代表的な作曲家としては,パレストリーナ,ナニーノGiovanni Maria Nanino(1545ころ-1607),ソリアーノFrancesco Soriano(1549-1621),アネリオGiovanni Francesco Anerio(1567ころ-1630),スペイン人ビクトリアらが挙げられるが,17世紀のバロック時代にスティーレ・アンティーコstile antico(古様式)の名で,パレストリーナらの様式に従って宗教曲を作曲したアレグリGregorio Allegri(1582-1652),ベネボリOrazio Benevoli(1605-72)らが含められることもある。
16世紀のローマ楽派の音楽家たちは,反宗教改革の粛正的気風のなかで,半音階的手法などによる不安定な情感の表出を排除した,清澄なア・カペラのミサ曲やモテットを作曲し,同時代のベネチア楽派とは対照的に,教会ではオルガン以外の楽器を用いないようにした。ローマ楽派の宗教曲は,1903年のピウス10世の回勅で,ローマ・カトリックの教会音楽として最もふさわしいものとされた。
ローマ楽派の呼称は,ときとして,17世紀のローマのバルベリーニ劇場を中心に,初期の喜劇的オペラなどを作曲したマツォッキ兄弟(兄Domenico Mazzocchi(1592-1665),弟Virgilio M.(1597-1646)),アバティーニAntonio Maria Abbatini(1595ころ-1677ころ),マラツォーリMarco Marazzoli(1602ころか08ころ-62)らに対しても用いられることがある。
執筆者:戸口 幸策
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報