改訂新版 世界大百科事典 「ホロックス」の意味・わかりやすい解説
ホロックス
Jeremiah Horrocks
生没年:1618ころ-41
イギリスの天文学者。時計職人の息子としてランカシャーに生まれる。給費生としてケンブリッジのイマヌエル・カレッジに在籍したらしい。天文学を志し,正確な天体観測に熱意を燃やした。チコ・ブラーエの仕事を望遠鏡を使ってさらに強化すること,とりわけ月の運動を理論化することが彼の仕事の目標となった。J.ケプラー,G.ガリレイの影響を受け,とくに後者の自然落下理論を惑星に適用し,すべての惑星は中心たる太陽に向かって〈落ちよう〉とする傾向をもつと考えた。この点でケプラーよりはR.フックや1670年代のニュートンの着想に近い。1637年に集中的に行われた月の運動論では,その軌道運動からの不規則なずれを精細に観測し,採用されていた補正用の数値を改良したが,この結果は,J.フラムスティードによって高く評価され,月運動の数値表としてフラムスティードの手で構成された。当時,彼の仕事は草稿で回読されており,その草稿はピューリタン革命やロンドンの大火などで散逸したものが多く,生まれたばかりのローヤル・ソサエティが1672-73年に死後出版した《全集》のほかは書物の形ではほとんどない。
執筆者:村上 陽一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報