改訂新版 世界大百科事典 「ホーナイ」の意味・わかりやすい解説
ホーナイ
Karen Horney
生没年:1885-1952
新フロイト派の代表的な女性精神分析医。ハンブルクに生まれ,ベルリン大学を卒業した。学生時代からK.アブラハム,H.ザックスらの教育分析を受けた。ベルリン精神分析研究所で活動したが,1932年F.アレクサンダーに招かれて渡米,主としてニューヨークで活躍した。S.フロイトのリビドー理論を批判し,幼児性欲よりも文化的要因や社会的要因を重視した。そして去勢コンプレクスよりも幼児期の環境と対人関係の役割に注目し,幼児期に十分な愛情を受けられないときに幼児の抱く不満と敵意にみちた孤立感や無力感を〈基本的不安〉と名付け,それを神経症発生の素地と考えた。後年,神経症は〈真の自己〉と〈神経症的自己〉の葛藤の結果でもあると考えるに至り,その人にとっての固有の可能性である〈真の自己〉をみずから疎外し,〈神経症的自己〉に固執することから神経症は生ずると主張した。そして神経症治療の目標は〈真の自己〉の発見すなわち〈自己実現〉にあるとした。主著には《精神分析の新しい道》(1939),《神経症と人間の成長》(1950)などがある。
執筆者:馬場 謙一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報