精神分析療法(読み)せいしんぶんせきりょうほう

百科事典マイペディアの解説

精神分析療法【せいしんぶんせきりょうほう】

1890年代にオーストリアの精神病学者フロイトが創始した精神療法。現在では,強迫神経症心気症ヒステリー(性格要因が強い場合),思春期痩(やせ)症,境界例などの治療のために,次のような方法で行われている。 分析医と患者は予備面接の後,治療期間や頻度(原則として外来で1回1時間,週4〜5回行う。通常は1つの分析に1〜3年かかり,これを標準精神分析療法という),料金などを取り決める。週1〜2回行う簡易精神分析療法もある。 治療では,患者は寝椅子に仰向けに寝て,医師が背後に位置した状態で,なんでも頭に浮かんでくることをそのまま話す。これを〈自由連想〉という。医師は患者の自発的な表現を受身で傾聴し,積極的に指示や説得,指導をしない。 患者は,視野の外にいる相手に一方的に話さなければならないことで,当惑したり,突如として沈黙して,自由連想を中断する。この状態を〈抵抗〉と呼び,主に次のような種類がある。(1)抑圧抵抗――自由連想によって,それまで抑圧されていた無意識的な衝動が出ることに危険を感じ,〈もう話すことはない〉などと言う。(2)疾病利得抵抗――患者は病気であることで,もともとの葛藤から逃れたり,学校や会社へ行かなくてすむといった利益を得ようとしていることがしばしばあり,これを放棄したがらないために起こす抵抗。(3)超自我抵抗――超自我が厳しい懲罰欲求をもち,治療によって患者が楽になるのを許さないもの。 医師はこうした抵抗や,患者の医師への感情的反応(これを転移と呼ぶ)を手がかりに,症状の原因となっている超自我や,ゆがんだ自己の防衛パターンを分析する。適当な時期に解釈することを繰り返すと,患者は自分の病気を洞察するようになり,病的な適応パターンは修正されていき,人格が再構成される。 このほか,自由連想では夢分析や無意識の行動の分析なども行う。 精神分析療法は時間と費用がかかり,日本では分析医の数も少ないことから,この療法以外には効果が期待できない患者を対象に行われている。なお,潜伏性分裂病が顕在化したり,統合失調症精神分裂病)が悪化する恐れがあるため,こうした疾患の疑いがあれば対象外となる。→精神分析

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世界大百科事典内の精神分析療法の言及

【自由連想法】より

…神経症に対する精神分析療法の基本技法。S.フロイトの創案になるもので,1890年代に漸進的に確立されていった。…

【精神分析】より

…また治療者は,自由連想(夢分析を含む)の全材料,抵抗,感情転移の様相を検討し,患者自身にとっては無意識の心的状況を再構成し,これを時機を選んで患者に伝えることによって患者の自己洞察をいっそう深めることが可能となる。 精神分析療法においては治療者は一貫して中立的態度を保ち,自己の人生観や世界観を押しつけないことが要請されている。さらに感情転移状況においては,治療者にも意識的・無意識的な逆転移counter‐transferenceとよばれる感情反応がひき起こされるので,治療者は自己の感情反応に対する自覚とその統制とが必要となる。…

【転移】より

…〈感情転移〉とも訳される。精神分析療法の過程において,患者の幼児期における重要な人物(たとえば両親)に寄せた感情,欲望,観念などが分析者に向けて展開されること。このような人間関係の一様態は,あらゆる人間関係の中で本来多かれ少なかれみられるものであり,たとえば特定の人物が知らず知らずのうちにあたかも親のように見立てられたりすることはよくある。…

※「精神分析療法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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