ボルボ(読み)ぼるぼ(英語表記)AB Volvo

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ボルボ」の意味・わかりやすい解説

ボルボ
ぼるぼ
AB Volvo

スウェーデンの自動車・建築機械等のメーカー。乗用車部門を担っていたボルボ・カーズVolvo Cars社が1999年にアメリカのフォード社に吸収合併されたため、以後、トラック、バス、建設用機器が製造の中心となった。ボルボ社は、1926年、ガブリエルソンAssar Thorvald Nathanael Gabrielsson(1891―1962)とラルソンErik Gustaf Larson(1887―1968)が、スウェーデンのボールベアリング会社SKFの資金援助によって設立。1927年にボルボ車を297台生産し、翌年フィンランドへの輸出も開始した。1930年代に入り急成長を遂げ、第二次世界大戦中は、垂直統合を推し進めて部品の内製化に努めた。戦後、1949年には10万台の生産体制が生まれ、ボルボPV444は国民車となって、20年間で44万台が生産された。1964年には600万平方メートルの敷地にトースランダ工場を建設し、1966年から144Sの生産を開始した。また、海外にも積極的に進出し、1956年にはヨーロッパの自動車メーカーとしては初めてアメリカに組立て工場を建設した。1981年にはアメリカの大手トラックメーカー、ホワイト・モーター社の主要工場を買収。さらに同年、スウェーデンのエンジニアリング・林業・金融などを含むコングロマリット、ベイヤインベストBeijerinvest ABの全株を取得して、事業の多角化に乗り出した。

 1980年代に経営悪化に陥ったが、20億ドル以上を投資して工場の近代化に取り組んだ。1990年代初めにも赤字に苦しんだが、不採算部門の売却黒字に転じた。1998年にはカナダ工場を閉鎖する一方、1999年にスウェーデンの競合会社スカニアScania ABの株式13%を取得した(2000年に46%まで増加)。さらに、トラック分野に生産の中心を移すために、1999年3月、当時生産台数世界第16位だった乗用車部門をフォードに500億スウェーデン・クローナ(約64億5000万ドル)で売却した。なお、売却前の1998年末の乗用車売上台数は39万9700台であった。

 乗用車部門を売却後、トラック、バス、建設用機器、船舶・工業用エンジン、航空機用部品の五つの柱を中心に事業を展開してきた。2001年には、ルノーから大型トラック生産・販売の子会社を買収したが、その際、ルノーからの資本を受け入れたため、ルノーがボルボの筆頭株主となった。2006年には、日産自動車が保有していた日産ディーゼル工業(現、UDトラックス)の株式の約19%を取得して、生産販売の提携関係を強化し、さらに2007年には同社の株のTOB(株式公開買付)を行って完全子会社とした。

 2008年の売上高は3036億6700スウェーデン・クローナ、利益は100億1600万スウェーデン・クローナ。その売上げの内訳は、トラック67%、バス6%、建設用機器18%、船舶用エンジン4%、航空機用エンジン2%、金融3%である。また地域別売上げは、ヨーロッパ52%、北米16%、南米7%、アジア18%、その他7%となっている。従業員数は10万人。

[湯沢 威・上川孝夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「ボルボ」の意味・わかりやすい解説

ボルボ[会社]【ボルボ】

スウェーデンの輸送機メーカー。本社イェーテボリ。生産する自動車は氷雪地の道路走行に適する安全性と車体の強さで知られる。1915年鉄鋼メーカーとして創業。1926年ベアリング・メーカーのAB SKFの子会社となり,社名を現名に。1927年より自動車生産をはじめ,1935年SKFから分離独立。その後事業を多角化,1970年代以降海外進出。1979年乗用車部門を独立。1981年Beijerinvestグループを買収,AB Volvoは持株会社となる。建設機械,航空機用エンジン,エネルギーなど幅広く事業を展開。1999年1月,乗用車部門を米国のフォード・モーター社に売却以降,自動車事業はトラック部門に専念。16トン以上の重量トラックでは世界の17%のシェアを占める。2007年株式の公開買い付けによって日産ディーゼル工業を子会社化した。2011年12月期売上高3104億クローネ。
→関連項目イェーテボリ

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ボルボ」の意味・わかりやすい解説

ボルボ
Volvo Aktiebolaget

バス,トラック,建設関連機器を製造するスウェーデンの大手メーカー。1926年ベアリングメーカーのスベンスカ・クラーゲルファブリーケン SKFの子会社として設立され,1935年独立。当初は乗用車を中心にトラック,バスを生産,その後有力企業を買収して航空機・船舶・産業用エンジン,農業・建設機械,レジャー製品などの分野へも進出,傘下子会社とともにボルボグループを形成した。自動車メーカーとしての生産規模は大きくないが,エンジン,走行性に優れ,堅牢な車体は国際的に評価が高い。乗用車はスウェーデン国内シェア 30%,重量トラックは世界最大級の販売実績を誇った。建設機械,船舶用エンジンでも世界トップクラス。1999年乗用車部門のボルボ・カー Volvo Carsをアメリカ合衆国の自動車メーカーフォード・モーターに売却し,トラック部門に特化することを決めた。さらに同年 10月には三菱自動車工業との間で資本・業務提携を結んだ。2001年フランスのルノーのトラック部門を買収した。2007年日産ディーゼル工業(→UDトラックス)を完全子会社化。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

世界の電気自動車市場

米テスラと低価格EVでシェアを広げる中国大手、比亜迪(BYD)が激しいトップ争いを繰り広げている。英調査会社グローバルデータによると、2023年の世界販売台数は約978万7千台。ガソリン車などを含む...

世界の電気自動車市場の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android