ボントック(読み)ぼんとっく(英語表記)Bontok

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ボントック」の意味・わかりやすい解説

ボントック
ぼんとっく
Bontok

フィリピンのルソン島北部に横たわるコルディエラ・セントラル山脈のほぼ中央部、マウンテン州に居住するプロト・マレー系の民族。ボントック語を母語とする人々は約15万。ボントックとは元来中心的集落の名称にすぎなかったが、マウンテン州一帯に居住する山地民をさすようになった。キリスト教徒化した平地民からは、他の周辺諸民族とともに「山の人々」を意味する「イゴロット」の名でよばれることもある。近隣諸民族との間に文化的差異はあまりないが、丸い編み帽子を後頭部にのせること、割礼があること、山刀よりも手斧(ておの)を用いるのを好むことなどが、彼らの特徴となっている。生業米作が中心で、急峻(きゅうしゅん)な山腹を高度な灌漑(かんがい)技術によって棚田(たなだ)にして水田耕作を行っている。ほかにサツマイモやバナナ、トウモロコシも栽培される。親族は双系的であり、イリとよばれる集落が地縁集団としてのまとまりをなしている。卓越した政治的、社会的指導者はなく、集落内のできごと、他集落との間の戦いや和解の決定、儀礼祭事に関することなどは、慣習法にのっとり長老たちの合議制によって処理される。各集落内にはアトゥとよばれる集会場がいくつかあり、ここで祭儀会議が執り行われる。また、アトゥは7歳以上の未婚男性の寝宿ともなっている。若者たちはここで年長者からしきたりや慣習を学ぶ。アトゥには女性は入れない。少女たちは6歳ぐらいから祖母伯母の家に寝泊まりするようになり、13、14歳になるとオロッグとよばれる娘宿(むすめやど)に移り、ここで女としてのしつけを学ぶ。ここは若者たちの恋の語らいの場でもあり、得意の鼻笛を奏で愛の歌をささやいて求婚する。宗教祖霊やさまざまな神格・精霊信仰が中心で、キリスト教文化の影響が拡大しつつある現在においても、各種の治病儀礼や農耕儀礼が行われている。

[結城史隆]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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