ボンヌフォア(読み)ぼんぬふぉあ(英語表記)Yves Bonnefoy

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ボンヌフォア」の意味・わかりやすい解説

ボンヌフォア
ぼんぬふぉあ
Yves Bonnefoy
(1923―2016)

フランス詩人。美術批評家、シェークスピア翻訳家としても知られる。トゥールに生まれる。シュルレアリスムの影響下に詩作を始めたが、詩集ドゥーブの動と不動』Du mouvement et de l'immobilité de Douve(1953)で一躍注目を集め、第二次世界大戦後のもっとも重要な詩人の一人と認められた。ヘーゲルハイデッガー哲学ボードレールジューブの詩の影響を受け、重層的で暗示に富む語法を特徴とするその作品は、死と有限自覚をもとに純粋な現存を目ざす困難な探索主題としている。1981年コレージュ・ド・フランス教授就任フォルマリスム、記号論への批判を展開した。ほかに『昨日は荒涼として支配して』(1958)、『文字で書かれた石』(1959)、『閾(しきい)の罠(わな)のなかで』(1975)、『光なしに在ったもの』Ce qui fut sans lumière(1987)、『雪のはじまりと終わり』Début et fin de la neige(1991)、『さまよう生』La Vie errante(1993)などの詩集、『不確かなもの』(1959)、『アルチュール・ランボー』(1961)、『マントバでみた夢』(1967)、『ローマ1630年』(1970)、『背後の国』(1972)、『赤い雲』(1977)、『ことばの真実』La Vérité de parole(1988)、『アルベルト・ジャコメッティ』Alberto Giacometti(1991)、『デッサン色彩、光』Dessin, couleur et lumière(1995)などの評論がある。

[田中淳一]

『宮川淳訳『ボンヌフォア詩集』(1975・思潮社)』『阿部良雄訳『ランボー』(1977・人文書院)』『阿部良雄・兼子正勝訳『現前とイマージュ』(1985・朝日出版社)』『清水茂訳『ジャコメッティ作品集』(1993・リブロポート)』『清水茂訳『イヴ・ボヌフォワ詩集』(1993・小沢書店)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ボンヌフォア」の意味・わかりやすい解説

ボンヌフォア
Bonnefoy, Yves

[生]1923.6.24. ツール
[没]2016.7.1. パリ
フランスの詩人,評論家。20世紀後半フランスにおける最も重要な詩人とされ,評論,学究,翻訳も高く評価された。ポアティエ大学で数学を学んだのちパリに赴き,パリ大学で哲学を学び,シュルレアリスト(→シュルレアリスム)らと交流して影響を受けた。初の詩集『ドゥーブの運動と静止について』Du mouvement et de l'immobilité de Douve(1953)で絶賛を浴びた。ほかの詩集に『きのう砂漠に君臨して』Hier régnant désert(1958),『石文』Pierre écrite(1959),詩論に『ありそうもないこと』L'Improbable(1959),『ランボー』Arthur Rimbaud(1961),『赤い雲』Le Nuage rouge(1977)などがある。翻訳ではウィリアム・シェークスピアの『ハムレット』など主要作品のほか,ジョン・ダン,ウィリアム・バトラー・イェーツらの作を仏訳。アルベルト・ジャコメッティ,フランシスコ・デ・ゴヤ・イ・ルシエンテスなどについての美術評論の著作もある。また『世界神話大事典』Dictionnaire des mythologies et des religions des sociétés traditionelles et du monde antique(1981)の編纂も行なった。フランスとアメリカ合衆国の多数の大学で教鞭をとり,1981~94年コレージュ・ド・フランスで教授を務めた。2007年フランツ・カフカ賞を受賞。

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改訂新版 世界大百科事典 「ボンヌフォア」の意味・わかりやすい解説

ボンヌフォア
Yves Bonnefoy
生没年:1923-

フランスの詩人,評論家。トゥールに生まれ,パリ大学に学んだ。ニース,プロバンスなどの大学で講じた後,1981年コレージュ・ド・フランス教授。シュルレアリスムの影響下に詩作を始めたが,やがてヘーゲル,ハイデッガーなどから刺激を受けつつ,現存présenceへの接近と言葉による生の救済を目ざす独自の詩風を確立,第2次大戦後の最も重要な詩人の一人と目されるに至った。おもな詩集に《ドゥーブの動と不動》(1953),《昨日は荒涼として支配して》(1958),《言葉で書かれた石》(1959)などがある。ほかに評論《ありそうもないもの》(1959),《ランボー》(1961)など。中世美術の研究家,シェークスピアの翻訳者としても著名。
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百科事典マイペディア 「ボンヌフォア」の意味・わかりやすい解説

ボンヌフォア

フランスの詩人。第2次大戦後に登場して注目された詩人のひとりで,当初はシュルレアリスムの影響を受け,処女詩集《ドゥーブの動と不動》(1953年)を発表した。その後,P.J.ジューブの影響がうかがわれる詩集《昨日は砂漠を支配して》,ボードレールに対する強い共感を表明した《不確かなもの》(1959年)等がある。ゴシックの教会や昔の壁画などの造形芸術にも強い関心を寄せている。

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