ポートランド(読み)ぽーとらんど(英語表記)Portland

翻訳|Portland

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ポートランド」の意味・わかりやすい解説

ポートランド(アメリカ合衆国、オレゴン州)
ぽーとらんど
Portland

アメリカ合衆国、オレゴン州北西部、ウィラメット川に臨む同州最大の都市。人口52万9121(2000)。気候温暖なウィラメット谷に立地する。交通・貿易・工業の中心地として知られ、世界有数の浮きドックをもつ港は小麦、羊毛、材木、ボーキサイトなどを満載して出航する貨物船で活気に満ちている。工業ではとくに突出した業種はなく、比較的規模の小さな業種が多様化して経済的な安定を保っている。製材、製紙、木工、衣料、食品加工、家具、電子機器、電気機器、造船、航空機などがあり、近年はとくにエレクトロニクス関連工業の進出が著しい。1845年に町が建設されたが、本格的な発展は49年のゴールド・ラッシュ以降で、その後、83年の鉄道の開通、97年のアラスカ・ゴールド・ラッシュが大きな工業発展をもたらした。第二次世界大戦時には「造船のまち」として知られ、人口も順調な伸びをみせている。教育・文化面にも優れ、ポートランド州立大学(1955創立)、ポートランド大学(1901創立)を軸に多くの大学が集積する。とくに音楽教育に重点を置く大学が多く、ポートランド交響楽団など音楽的な土壌が着実に育っている。また、「バラのまち」と別称されるほどバラ栽培が盛んで、毎年催されるローズフェスティバルは全国的に有名である。周囲は美しい自然にすっぽりと囲まれ、フット山、ジェファーソン山、レーニア火山などの山並みコロンビア川の峡谷、滝、森林など観光・レクリエーション地に事欠かず、スキーキャンプハイキング、狩猟、釣りを楽しむことができる。日系人が多いことでも知られる。

[作野和世]


ポートランド(アメリカ合衆国、メーン州)
ぽーとらんど
Portland

アメリカ合衆国、メーン州南西部、カスコ湾に面する都市。人口6万4249(2000)。良港を有し、古くから海港都市として発達してきた。とくに石油輸出港として重要で、交通の要地でもある。また、農林業地帯の中に位置する集散・加工の中心地であり、缶詰、冷凍食品などの食品加工、製材、製紙、繊維、機械、印刷・出版など諸工業の発達がみられる。1632年に町が建設された。1820年に市制が敷かれ、32年まで州都の地位にあった。H・W・ロングフェローの出生地としても有名で、彼の生家スイート・マンションなどゆかりの建物も保存され、1791年に建設されたポートランド・ヘッド灯台も見学できる。

[作野和世]


ポートランド(イギリス)
ぽーとらんど
Portland

イギリス、イングランド南部、ドーセット県のポートランド島Isle of Portlandにある町。人口1万0915(1981)。本土の港町ウェイマスWeymouthの南方約6キロメートルのイギリス海峡上にあり、本土とは幅200メートル足らずの細長い砂州で連絡している。全島がジュラ紀の石灰岩からなり、採石業が盛ん。採掘された石はポートランド石の名で建築用材に使用され、ロンドンのセント・ポール大聖堂の建築用材となった。軍港、ヨットハーバーがある。

[久保田武]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ポートランド」の意味・わかりやすい解説

ポートランド(伯)
ポートランド[はく]
Portland, William Bentinck, 1st Earl of

[生]1649.7.20.
[没]1709.11.23. バッキンガムシャー
オランダ生れのイギリスの政治家。 1664年頃オランニェ公ウィレム (のちのウィリアム3世 ) の小姓になり,以来その信任を受けた。 87年イギリスに渡ってジェームズ2世反対派貴族と協議するなど,名誉革命の実現に尽力し,革命後伯爵に叙せられ,侍従長,宮内次官,枢密顧問官に任じられた。王に従いオランダ軍を指揮してアイルランド (1690) ,ネーデルラント (91~94) に転戦。 97年ライスワイク条約の成立に大きく貢献。翌年パリにおもむいてスペイン領土分割の秘密条約を締結。この頃にわかに台頭してきたファン・ケッペル (→アルベマール〈伯・公家〉 ) と対立して王との仲も冷え,99年辞職して宮廷から引退。しかし王の晩年に和解し,その死後は田舎に退いた。

ポートランド
Portland

アメリカ合衆国,オレゴン州北西部にある,同州最大の都市。ウィラメット川とコロンビア川との合流点付近にあり,対岸はワシントン州のバンクーバーである。 1829年入植,何回かのゴールド・ラッシュと,オレゴン街道から移住者が入って発達した。コロンビア川と南北の道路の交差する要衝にあたり,コロンビア,ウィラメット両河川流域を後背地としている。築港,ノーザン・パシフィック鉄道の完成,電源の開発などにより造船,化学,精錬 (おもにアルミニウム) などの工業が発達した。ほかに食品加工,エレクトロニクス,製材,繊維などの工業も重要である。バラ栽培が盛んで,毎年6月に『バラ祭』が行われる。川をはさんで新旧両市域に分れ,8つの橋が両者を結んでいる。ポートランド大学 (1901創立) ,ルイス・クラーク大学 (1867) ,州立ポートランド大学 (1946) などがある。人口 58万3776(2010)。

ポートランド(公)
ポートランド[こう]
Portland, William Henry Cavendish Bentinck, 3rd Duke of

[生]1738.4.14. バッキンガムシャー,ブルストロード
[没]1809.10.30. バッキンガムシャー,ブルストロード
イギリスの政治家。 1761年下院議員,翌年父の爵位を継いで上院に入る。ロッキンガム (侯)に従い,ホイッグ党の有力貴族として活躍。ロッキンガムの死後 C.フォックスとともに党を指導し,83年首相に就任。 84年以降ピット (小)内閣に反対したが,フランス革命期の急進主義運動の発展を恐れて,フォックスと決別し,94年ピット内閣に内相として入閣,治安政策を担当。以後トーリー党政権の閣僚。 1807年再度首相に就任。

ポートランド
Portland

アメリカ合衆国,メーン州南西部にある同州最大の都市。カスコ湾を囲む丘陵性の半島に位置する港湾都市。 1632年イギリス人により植民が始ったが,インディアン,フランス人との戦いにより町はたびたび破壊された。 1775年にはアメリカ独立運動への報復としてイギリス軍艦の砲撃を受けた。 1820~32年メーン州の州都。 86年には独立記念日の祝賀会からの失火で全焼したが,その後再建され発展を続けた。州南西部の交通,商業の中心で伝統的な産業である漁業,造船業に代って各種の製造工場の進出が著しく,パルプ,製紙,食品,織物,木材,家具,製靴,化学,金属などの工業が立地する。美術館,大学などがあり,メーン州の文化中心地でもある。人口6万 4354 (1990) 。

ポートランド
Portland

オーストラリア,ビクトリア州南西部,メルボルンの西約 360kmにある港町。同州最初の白人定住 (1834) 地。後背地は酪農・農業地帯。水産加工のほか,農産物を輸出。人口1万 136 (1991推計) 。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

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