単に耐性ともいう。薬物を反復投与していくと、その薬物に対して生体の感受性が低下することがしばしばみられる。すなわち、連用により同じ用量を投与しても効果が現れず、徐々に増量していかなければ効かないという現象を耐性toleranceという。一方、化学療法剤では、反復投与により病原寄生体がその薬物に対して感受性の低下をおこし、効かなくなる現象がみられる。この場合の耐性は抵抗性resistanceとよんで区別される。つまり、生体側の薬物に対する感受性低下現象がtoleranceで、耐容性、耐薬性ともいわれ、生体には関係のない、微生物など病原寄生体そのものの感受性低下現象がresistanceである。薬剤耐性を示す薬物としては、催眠薬、モルヒネ、アルコールなどが知られる。また、ごく短時間内に現れる耐性をタキフィラキシーTachyphylaxie(ドイツ語) あるいはタキフィラキシスtachyphylaxisといい、急性耐性ともよばれる。エフェドリンがよい例で、1回目の数分後に2回目の投与を行っても薬効が明らかに減弱する。
なお、抗生物質・化学療法剤ではペニシリン系、セフェム系、アミノ糖系、パラアミノサリチル酸製剤、イソニアジドなど、多くの薬剤に耐性菌が発現しており、耐性菌に対する新しい薬物の開発が進められている。とくに抗微生物薬の耐性については、化学構造の類似した薬物に対しても耐性現象がみられ、交叉(こうさ)耐性とよばれる。他の薬物についても、同様な交叉耐性がみられる。
[幸保文治]
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…しかし極端に耐性の強い品種や,偶然出現した耐性の強い突然変異体は,ほとんど被害をまぬがれるので,農業においてはこのような耐虫性・耐病性品種の育成が盛んに試みられている。 一方,人間の作り出した薬剤に対しては,生物は急速に耐性を発達させ,いわゆる薬剤耐性(薬物耐性)の生物ができてくる。抗生物質をはじめ種々の医薬に対する耐性菌の出現,あるいはDDTその他の殺虫剤に対する抵抗性品種のハエ,カ,農業害虫など,その例はきわめて多く,大きな社会問題となっている。…
※「薬剤耐性」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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