アンデルセンの童話。1848年作。大みそかの街の通りを、マッチ売りの少女がはだしで歩いていた。マッチが一つも売れず、指を暖めるために1本のマッチをすると、美しい幻が少女の前に展開する。初めのマッチは大きなストーブ、ついで御馳走(ごちそう)いっぱいのテーブルやきれいなクリスマスツリーが現れ、その光のなかに彼女をただ1人愛してくれたおばあさんが現れる。おばあさんを引き留めておくために残りのマッチを全部すると、一面の光のなかで少女はおばあさんに抱かれて空高く舞い上がる。翌朝、微笑を浮かべながら少女は街角で死んでいた。彼女がどんな美しいものを見たかを知る者は1人もなかった。貧しい少女時代を過ごした作者の母を記念した作品の一つで、きわめて短い作ながら不滅の光を放っている。
[山室 静]
『矢崎源九郎訳『マッチ売りの少女』(新潮文庫)』▽『高橋健二訳『マッチ売りの少女』(『アンデルセン童話全集2』所収・1979・小学館)』
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