マユミ(読み)まゆみ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「マユミ」の意味・わかりやすい解説

マユミ
まゆみ / 真弓
[学] Euonymus sieboldianus Bl.

ニシキギ科(APG分類:ニシキギ科)の落葉小高木。大きいものは高さ10メートルに達する。枝は黄褐色を帯びる。葉は普通長楕円(ちょうだえん)形で長さ5~15センチメートル、先端は短くとがり、裏面は毛がない。雌雄異株。5~6月、葉腋(ようえき)から長い柄のある集散花序を垂れ下げ、径約8ミリメートルで4数性の淡緑色花を開く。明瞭(めいりょう)な花糸があって、葯(やく)より長い。葯は黒紫色。果実は倒四角錐(すい)形。低山地に普通に生え、北海道から九州、および朝鮮半島、樺太(からふと)(サハリン)に分布する。葉の裏面主脈上に毛があり、深山に生える変種をカントウマユミユモトマユミ)という。材はこけしや将棋の駒(こま)などに利用し、若芽はゆでて食用とする。

[門田裕一 2020年2月17日]

文化史

語源は真弓で、古くは弓の材にされたといわれるが、福井県鳥浜貝塚の縄文時代の出土弓はカシ材が多い。『古事記』『日本書紀』には梓弓(あずさゆみ)との並記がみられる。『万葉集』には7首に真弓、白檀弓(しらまゆみ)あるいは白檀(しらまゆみ)の表現があり、枕詞(まくらことば)的に使用されている。例外は巻7の「南淵(みなみぶち)の細川山に立つ檀(まゆみ) 弓束(ゆづか)まくまで人に知られじ」(巻7)で、マユミの野生木が描写されている。『源氏物語』の篝火(かがりび)の巻には「いと涼しげなる遣水(やりみず)のほとりに、けしきことに広ごり伏したる檀(まゆみ)の木の下に打松(うちまつ)おどろ」と書かれ、平安時代庭でマユミが植えられていたことが知られる。江戸時代からいけ花にもされ、『替花伝秘書(かわりはなでんひしょ)』(1661)は「八月一五日に生ける“心(しん)”にマユミを使う」と記している。『和名抄(わみょうしょう)』では檀に萬由三(まゆみ)、衛矛(えいぼう)に久曽末由美(くそまゆみ)(現在不明の種)をあてているが、中国ではマユミ属には衛矛が使われる。

[湯浅浩史 2020年2月17日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マユミ」の意味・わかりやすい解説

マユミ
Euonymus sieboldianus

ニシキギ科の落葉低木であるが,ときには高さ3~5mの高木になることがある。ヤマニシキギともいう。日本各地の山野に自生し,庭木としても栽植される。よく分枝して枝を横に伸ばし,葉を対生する。葉は長さ5~10cmほどの楕円ないし倒卵状楕円形で先端が鋭くとがり,縁に鈍い鋸歯がある。初夏前年に出た枝の基部に集散花序をなして,淡緑色の小花を十数個ずつつける。萼片,花弁とも4枚で,花弁の長さは 5mmほどあり開出する。おしべは4本あり,めしべの基部は花盤となる。雌雄異株で,果実は四角形の 蒴果となり,熟すると4片に裂けて朱赤色の種子を露出する。葉は秋に美しく紅葉する。材は種々の細工物に用いられる。

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