ミズグモ(読み)みずぐも(その他表記)water spider

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミズグモ」の意味・わかりやすい解説

ミズグモ
みずぐも / 水蜘蛛
water spider
[学] Argyroneta aquatica

節足動物門クモ形綱真正クモ目ミズグモ科に属するクモ。水中生活性の唯一のクモであるが、体制がタナグモ類に似ており、二次的に水中に入り込んだものと思われる。水草の間に目の細かい棚網を張り、水面から体や脚(あし)の毛によって空気を水中に運び網の下に放して鐘状の空気の部屋をつくる。この中で摂食、脱皮交尾などが行われる。体長8~15ミリメートル、褐色で特別な斑紋(はんもん)もなく目だった外見上の特徴もない。歩脚に長毛を密生することが空気を運ぶための適応である。

 ヨーロッパからシベリア、中国の温帯地方に分布するが、日本では北海道の釧路(くしろ)、青森県、京都府、大分県、鹿児島県の高層湿原で発見されているが、さらに調査が進むと、ほかの地方からもみいだされるであろう。

 ミズグモに近縁ウシオグモ科のウシオグモは、太平洋沿岸の岩石海岸サンゴ礁海岸の干潮線付近にすむ。

 なお、コモリグモハシリグモ類がときに水中に潜ることがあるので、しばしばミズグモと間違えられるが、ミズグモは小川や普通の池にはいない。

[八木沼健夫]


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改訂新版 世界大百科事典 「ミズグモ」の意味・わかりやすい解説

ミズグモ (水蜘蛛)
water spider
Argyroneta aquatica

ミズグモ科のクモ。水中の水草の間に糸でドーム状の住居(空気室)を作り,そこに水面から空気を腹部と歩脚を使って運び込んで生活する。ヨーロッパ,旧ソ連,中央アジア,中国北部,日本に分布。体長8~15mm。頭胸部は赤褐色か淡褐色。腹部は暗褐色か灰褐色で,一般に頭胸部より色彩が濃い。歩脚は暗褐色または赤褐色。上あごは赤褐色で成体に近づくにつれ赤色が増す。腹部は細毛に覆われ,歩脚にも多数の毛を有する。ヨーロッパなどではごくふつうに産するが,日本では1930年に京都で初めて発見され,41年には北海道で採集されたが,その後36年間はまったく記録がなく,日本における存否が問われていた。しかし,77年再び京都で発見されて以来,青森,北海道,大分,鹿児島であいついで採集されている。

 餌は水生昆虫,イトミミズ,センチュウ,ミジンコ,ユスリカ幼虫などで,とらえると近くの水草の間に簡単な食事用の空気室をつくる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ミズグモ」の意味・わかりやすい解説

ミズグモ
Argyroneta aquatica; water spider

クモ綱クモ目ナミハグモ科。体長 1.5cm。2次的に水中生活に移った種でタナグモに近い。体は一様に褐色で,気泡を歩脚や体毛につけて,水草の間に張った鐘状の巣へ運び込む。ヨーロッパに広く分布するが,日本では北海道,本州,九州の数ヵ所で採集記録がある。なお水中生活をするクモには海岸の岩のくぼみやサンゴ礁の間隙に営巣するウシオグモも含まれ,日本ではヤマトウシオグモ Desis japonicaが知られる。 (→クモ類 )

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百科事典マイペディア 「ミズグモ」の意味・わかりやすい解説

ミズグモ

蛛形(ちゅけい)綱ミズグモ科の1種。体長8〜15mm。背面は褐〜赤褐色で毛を生ずる。水生のクモとして知られ,水草の間にドーム状の巣を作る。水面から空気の玉を腹面につけて運び,巣を空気で満たして交尾や産卵をする。ヨーロッパには比較的多いが,日本では京都と北海道からの報告があるのみだった。その後36年間記録がなかったが,1977年再び京都で発見以来,青森,北海道,大分,鹿児島で採集。他に水中にもぐるものにはハシリグモやドクグモなどもあるが,これらは水中に巣を作らない。

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