ミズスマシ(その他表記)Gyrinus japonicus

改訂新版 世界大百科事典 「ミズスマシ」の意味・わかりやすい解説

ミズスマシ (水澄)
Gyrinus japonicus

甲虫目ミズスマシ科の昆虫。平地池沼小川などに生息する。黒色の体は紡錘形で7mm内外の大きさ。鋼鉄状の光沢がある。日本各地,朝鮮半島などに分布する。成虫は春から秋まで見られ,水上を滑るように旋回し,水面に落下した小昆虫などを長い前脚でとらえる。中・後脚は短く扁平に変形していて,これをスクリューのように回転させる。また複眼上下に分かれ,泳ぎながら空中水中を同時に見ることができる。短い触角を水面につけているが,これは流速計と同じ役目をしている。上翅と腹部の間に蓄えた空気で呼吸し,水中に潜ることもできる。雌は5~6月に水生植物の葉に細長い卵を数個ずつ帯状に産みつける。幼虫は水中で生活し,小動物をとらえて体液を吸う。各腹節の側面に細長く突出したえらで呼吸する。幼虫は約4週間後には十分に成育し,陸へ上がって泥を頭ですくって背に乗せて運び,石の側面などにはりつけて泥の繭をつくって蛹化(ようか)する。約2週間後には成虫となって繭から出現する。

 ミズスマシ科Gyrinidaeは世界から約800種が記録されているが,主として熱帯亜熱帯に分布する。英名はその泳ぎ方からwhirligig beetleという。日本からはミズスマシのほか,オオミズスマシ,コミズスマシ,オナガミズスマシ,ミヤマミズスマシなど15種が知られる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミズスマシ」の意味・わかりやすい解説

ミズスマシ
みずすまし / 鼓豆虫
[学] Gyrinus japonicus

昆虫綱甲虫目ミズスマシ科に属する昆虫。日本各地に分布し、河川、池沼、水田などに多かったが、農薬や汚染によって激減した。体長6~7.5ミリメートル。黒色で卵形、背面は軽く膨らみ、腹面は平たく、頭・背面周辺には金属光沢がある。上ばねには点刻列をもち、雌ではやや光沢が鈍い。春から秋にかけて水面上を旋回し、水面に落下した小昆虫を捕食する。近似の種にコミズスマシ、ミヤマミズスマシなどがある。

 ミズスマシ科whirligig beetle/Gyrinidaeの甲虫は世界各地に産し、およそ700種が知られ、日本にも十数種が産する。卵円形ないし紡錘形で腹面は平たく、水面での活動に適し、目は上下に二分し、中脚は櫂(かい)のように幅広く平たく、触角は棍棒(こんぼう)状で短い。いずれも食肉性で昼間活動するが、オナガミズスマシの類は夜間活動する。幼虫は白色ないし淡黄色で細長く、各腹節両側に細長い枝状の気管鰓(さい)をもち、水中で小昆虫を捕食し、成熟すると上陸して土中に潜り、蛹(さなぎ)となる。

[中根猛彦]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ミズスマシ」の意味・わかりやすい解説

ミズスマシ
Gyrinus japonicus

鞘翅目ミズスマシ科。体長 7mm内外。体は楕円形,背面は隆起するが腹面は平らである。全体が黒色で,背面には強い光沢がある。前肢は長く,獲物を捕え,保持するのに適しているほか,雄では 跗節が広がり吸盤をもつ。中・後肢は櫂状で短く,水面の歩行に適している。複眼が上下に2分している点も水面での生活に適している。触角は非常に短く,第2節は大きく特異な形になっている。池沼や小川などにすみ,水面を高速で旋回して小動物を捕える。北海道,本州,四国,九州,朝鮮,台湾に分布する。なおミズスマシ科 Gyrinidaeは小~中型の水生甲虫ですべて肉食性である。触角は短く,複眼は上下に2分し,中・後肢が櫂状になっている。世界に広く分布し,約 700種が知られている。

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百科事典マイペディア 「ミズスマシ」の意味・わかりやすい解説

ミズスマシ

ミズスマシ科の甲虫の1種。体長6.5mm内外,黒色で鋼鉄光沢がある。腹面は赤褐色。日本全土,朝鮮,中国,台湾に分布する。池沼,小川などの水面を旋回するが驚くと水中に潜入する。ミズスマシ科は日本に約20種あり,触角は短く,複眼は上下に分かれて水面と水中を見るに適し,中・後肢はみずかき状になっている。いずれも水面にすみ,水面に浮いた動物の死体,他の小昆虫などを捕食する。幼虫は水草などの間にすみ同様に動物質を食べる。絶滅危惧II類(環境省第4次レッドリスト)。

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小学館の図鑑NEO[新版]昆虫 「ミズスマシ」の解説

ミズスマシ
学名:Gyrinus japonicus

種名 / ミズスマシ
解説 / 池やゆるやかな流れにすみます。水面を泳ぎながら、水に落ちた昆虫などを食べます。
目名科名 / コウチュウ目|ミズスマシ科
体の大きさ / 6~8mm
分布 / 北海道~九州
成虫出現期 / 春~秋

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