ミヒラーケトン(読み)みひらーけとん(その他表記)Michler's ketone

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミヒラーケトン」の意味・わかりやすい解説

ミヒラーケトン
みひらーけとん
Michler's ketone

芳香族ケトンの一つ。4,4'-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノンともよばれる。染料を合成する際の中間体として重要な化合物ドイツのミヒラーWilhelm Traugott Michler(1846―1889)が発見したのでこの名がある。

 薄板状の結晶で、水やエーテルには溶けないが、エタノールエチルアルコール)にはよく溶ける。トリフェニルメタン系染料の合成中間体としてしばしば用いられ、マラカイトグリーンメチルバイオレットなどの染料や感熱紙用色素のクリスタルバイオレットラクトンはいずれもミヒラーケトンから合成されている()。グリニャール試薬などの定性分析用試薬としての用途もある。

[廣田 穰 2016年11月18日]



ミヒラーケトン(データノート)
みひらーけとんでーたのーと

ミヒラーケトン

 分子式 C17H20N2O
 分子量 268.4
 融点  174℃
 沸点  360℃(わずかに分解

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

関連語 奈良坂

改訂新版 世界大百科事典 「ミヒラーケトン」の意味・わかりやすい解説

ミヒラーケトン
Michler's ketone

4,4′-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノンの別名。融点179℃,沸点360℃以上(わずかに分解),板状結晶。ジメチルアニリンホスゲン塩化亜鉛の存在で反応させ合成する。

 クリスタルバイオレット,オーラミンなどの染料合成に用いられる。またグリニャール試薬,アルキルリチウムなどの有機金属試薬の定性分析に使われる(ギルマンテスト)。ベンゾフェノン同様アルカリ金属の作用により暗青色のラジカルを生成する。
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