ミヤマクワガタ(読み)みやまくわがた

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミヤマクワガタ」の意味・わかりやすい解説

ミヤマクワガタ(ゴマノハグサ科)
みやまくわがた / 深山鍬形
[学] Veronica schmidtiana Regel subsp. senanensis (Maxim.) Kitam. et Murata
Pseudolysimachion schmidtianum (Regel) Yamaz. subsp. senanense (Maxim.) Yamaz.

ゴマノハグサ科(APG分類:オオバコ科)の多年草。茎は株立ちとなり、高さ約20センチメートル。葉は茎の下部に集まってつき、長い柄がある。夏、茎頂にまばらな総状花序を出し、淡紫色または紅紫色の花を開く。花冠は4裂し、径1~1.2センチメートル。本州高山の乾いた岩礫(がんれき)地に生え、地方変異が多い。

 基本種のキクバクワガタは全体がより大きく、葉は切れ込みが深い。山地に生え、北海道、および朝鮮半島樺太(からふと)(サハリン)からアラスカに分布する。

[久保多恵子 2021年8月20日]



ミヤマクワガタ(昆虫)
みやまくわがた / 深山鍬形虫
[学] Lucanus maculifemoratus

昆虫甲虫クワガタムシ科に属する昆虫。日本各地に分布する大形の甲虫で、体長は雄4~7センチメートル(大あごを含む)、雌3.5センチメートル前後。濃褐色から黒褐色で、雄は背面に細かい毛があるが、雌は黒くて光沢がある。雄は大あごが強大で、頭の後ろに耳状の隆起があるが、個体小形になるにつれて両方とも小さくなる。各腿節(たいせつ)の下面には雌雄ともに楕円(だえん)形の黄褐紋がある。低山から山地の広葉樹林にいて、夏に多く夜間灯火にもくる。幼虫は朽ち木にすみ、成虫になるまで約4年を要する。

[中根猛彦]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ミヤマクワガタ」の意味・わかりやすい解説

ミヤマクワガタ(深山鍬形)
ミヤマクワガタ
Veronica senanensis

ゴマノハグサ科の多年草。本州中部の高山に分布し,砂礫地に生える。地下茎は短く地をはい,茎は直立して高さ 10~25cm,ほとんど分枝しない。葉は長い柄があって対生し,茎の下部に多く,ふぞろいでとがった鋸歯がある。7~8月,花茎の頂に総状花序をつけ,まばらに 10~20花を開く。萼は4深裂し,裂片の先はとがる。花冠は淡紫色で紫色または紅紫色の筋があり,筒部は短く,先端は4深裂して径約 1cmに開く。上裂片は円形で大型,下裂片は倒卵形で小型。おしべは2本で,めしべとともに花外に突出する。

ミヤマクワガタ
Lucanus maculifemoratus

甲虫目クワガタムシ科。日本産クワガタムシ科の代表種で,南西諸島,対馬などを除き各地に普通にみられる。体長は雄で 43~72mm,雌で 32~39mm。体は光沢のある明るい栗色ないし黒色で,全体に金色微毛がある。雄の大腮は大きく,内歯が発達していて立派である。基方の第1内歯は特によく発達している。後頭部左右はやや盛上り,後方に少し突き出ている。大腮の形によって,いくつかの型に分けられている。成虫は6~9月に現れるが,低山地より高山地のほうが大きい個体が多い。樹液に集り,これを吸う。雄はけんかを好み,樹液場では大腮で他の虫を追払ったりする。灯火にもやってくる。成虫では越冬しない。

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知恵蔵mini 「ミヤマクワガタ」の解説

ミヤマクワガタ

ほぼ日本全土に生息する比較的大型のクワガタムシ。酷暑と乾燥に弱いため主に高く深い山(深山=ミヤマ)を生息域とする。旧環境庁により、環境調査のために選ばれる「指標昆虫」に指定されている。オスの体長は22~78ミリメートルほどで、頭部に冠のような平たい突起を持つことと、体長の3~4分の1ほどの太い大アゴ(ハサミ)を持つことが特徴。メスの体長は25~49ミリメートルほどで、ハサミはごく小さい。一部調査によると、2009年くらいから個体数が急速に減少しているという。

(2014-8-7)

出典 朝日新聞出版知恵蔵miniについて 情報

百科事典マイペディア 「ミヤマクワガタ」の意味・わかりやすい解説

ミヤマクワガタ(植物)【ミヤマクワガタ】

ゴマノハグサ科の多年草。本州の山地〜高山の砂礫(されき)地にはえる。茎は高さ10〜20cm,葉は卵形で長い柄があり,対生し,根元に多く集まる。夏,茎頂に青紫色または紅紫色で,濃色の条のある径1cm内外の花を多数,総状に開く。花冠は深く4裂。おしべ2本とめしべ1本が長く突き出る。

ミヤマクワガタ(昆虫)【ミヤマクワガタ】

クワガタムシ科の甲虫の1種。体長雄43〜72mm,雌32〜39mm。黒褐色でときに赤みを帯びる。雄の頭部には大きな大顎が二叉(ふたまた)に突出。日本全土の平地〜低山地にすみ,成虫は6〜8月に現れる。クヌギ等の樹液によく集まり,灯火にもくる。

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小学館の図鑑NEO[新版]昆虫 「ミヤマクワガタ」の解説

ミヤマクワガタ
学名:Lucanus maculifemoratus

種名 / ミヤマクワガタ
目名科名 / コウチュウ目|クワガタムシ科
解説 / 昼間も活動し、樹液に集まります。
体の大きさ / ♂30~79mm、♀25~45mm
分布 / 北海道~九州
成虫出現期 / 6~9月

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世界大百科事典(旧版)内のミヤマクワガタの言及

【クワガタムシ(鍬形虫)】より

…ノコギリクワガタProsopocoilus inclinatus(イラスト)の大あごは大歯型,中間型,小歯型に大別できる。幼虫の多くは広葉樹の枯木や朽木に穿孔(せんこう)するが,御蔵島産のミクラミヤマクワガタLucanus gamunusのようにイネ科植物が生えた土壌中に生息する種もいる。幼虫はコガネムシ科の幼虫に似ている。…

※「ミヤマクワガタ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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