改訂新版 世界大百科事典 「ミヤマセセリ」の意味・わかりやすい解説
ミヤマセセリ
Erynnis montanus
鱗翅目セセリチョウ科の昆虫。開張3.7~4.2cm。翅の地色は暗褐色で後翅に多数の黄褐色斑が散らばる。雌の前翅には大きな白色斑がある。ミヤマセセリという名にもかかわらず,このチョウの生息地は深山よりもむしろ里に近い低山地に多い。中国,朝鮮半島および日本に分布し,日本では北海道,本州,九州にかけて見られるが,南西諸島には分布しない。幼虫の食樹のクヌギ,コナラ,ミズナラ,カシワなどを含む落葉広葉樹林にすみ,年1回発生し,成虫は暖地では3月下旬~4月中旬,寒地では5~6月ころ現れる。タチツボスミレ,クサイチゴなどの花によく集まり,翅を水平に開いてみつを吸うことが多い。雌は食樹の新芽の基部に1個ずつ産卵する。幼虫は初めは食樹の先端部に小さな巣をつくるが,のちに2~3枚の葉を集めて巣をつくるようになる。晩秋,落葉とともに巣は幼虫を入れたまま地表に落下し,幼虫のまま地表で越冬する。
執筆者:高橋 真弓
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報