メランヒトン(読み)めらんひとん(英語表記)Philipp Melanchton

日本大百科全書(ニッポニカ) 「メランヒトン」の意味・わかりやすい解説

メランヒトン
めらんひとん
Philipp Melanchton
(1497―1560)

ドイツの宗教改革者、人文主義者。人文主義者ロイヒリン親族で、エラスムスの精神により教育され、早くから天才児として知られた。1518年チュービンゲン大学からウィッテンベルク大学ギリシア語の教授として招かれ、ルターの影響を受け、哲学から聖書学に転じ、ルターの同僚として宗教改革運動の指導者となる。1521年に『神学総論(ロキ・コンムーネス)』第1版を出し、宗教改革の教義を初めて明瞭(めいりょう)に組織した。その教育上の才能によりプロテスタント神学と哲学の教師となる。1530年にはプロテスタント最初の信仰告白である「アウクスブルク信仰告白」を執筆した。彼の性格は温和で、指導力に欠けるところもあったが、ルターの生存時には両者相違は顕在化しなかった。だが、晩年はルター神学との違いが目だち、論争の種を残した。しかし彼の人文主義的精神は、ルター派教会カルバン主義とを結び付ける重要な方向を導き出したのである。

金子晴勇 2018年1月19日]

『藤田孫太郎訳『神学総論』(1949・新教出版社)』『R・シュトゥッペリッヒ著、倉塚平訳『メランヒトン』(1971・聖文舎)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「メランヒトン」の意味・わかりやすい解説

メランヒトン
Melanchthon, Philipp

[生]1497.2.15. バーデン,ブレッテン
[没]1560.4.19. ウィッテンベルク
ドイツの神学者,宗教改革者,教育者。本名 Schwarzerd (黒い土の意) からギリシア語化してメランヒトンと呼ばれた。母のおじで人文学者のロイヒリンの薫陶を受け,ギリシア古典に通じた。 1518年ウィッテンベルク大学でギリシア語教授となり,ルターとともに宗教改革に乗出し,新教初の体系的神学書『ロキ・コンムネス』 Loci communes rerum theologicarum (1521) を出版し,ルターに次ぐ指導者となった。ローマ教会との論争を通じて,『アウクスブルク信条』『弁証』などを執筆,ルター派の正統を代表するものとみなされた。その後,特に聖餐に関してルターとの考えの相違が明らかとなったが,両者は最後まで友情を保った。ルターの死後アウクスブルクの暫定取決め (48) に対して,信仰による義認を否定しないかぎりアディアフォラ (→アディアフォリスト論争 ) は実践してよいと,ローマ教会に妥協的であったので鋭く批判され,孤立した。またカルバン立場とも妥協的であり,ルター派内の論争のもととなった。メランヒトンに従う人々はフィリップ派と称された。

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