カルバン主義(読み)カルバンしゅぎ(英語表記)Calvinism

翻訳|Calvinism

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カルバン主義」の意味・わかりやすい解説

カルバン主義
カルバンしゅぎ
Calvinism

宗教改革者カルバンの影響を受けて展開したプロテスタント主義の一系統をさす。改革派教会あるいは長老派とも呼ばれる。そのなかにはカルバン自身の考え方を修正,変形したものも含まれる。旧・新約聖書の本質的一致,神の主権と自由,国家に対する教会の自由の強調などを特徴とするが,なかにはこれらを形式的に強調するあまり,聖書が一言一句神の霊感を受けたとする逐語霊感説や,神の救いは人間の意志とは無関係にすでに決定されているとする決定論的予定説なども説かれ,オランダではアルミニウス派の反発を招いたが,ドルト教会会議 (1618~19) は,このような厳格な形式主義的理解を貫いた。しかし,他方カルバンの精神は,イギリス国教会ではピューリタンに影響を与え,ドイツ西部ではメランヒトンの神学思想と触れることによって,ハイデルベルク信仰問答 (1563) にみられるような穏健なドイツ・カルバン主義を生んだ。さらに旧約と新約とを契約という一点において統一的に理解するカルバンの思想はコクツェーユス契約神学を生み出した。国家に対する教会の自由の強調はユグノー,ピューリタンを経て人民主権の思想を育成し,その労働の倫理 (世俗内禁欲) は初期資本主義の思想的基盤となった (M.ウェーバー) 。経済的には,カルバンの教説は利潤追求を積極的に肯定したため,新興市民階級に受入れられて資本主義精神の根底となったとされている。また政治的には,カルバン主義は教会組織や信仰態度において平等主義や個人主義を鼓吹したので,人民主権理念に立つ民主主義運動の源泉となったとされている。事実,ピューリタン革命,ユグノーの闘争,オランダ独立戦争などにおいてカルバン派は民主主義の旗手であった。

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