ツァーリズム(読み)つぁーりずむ(英語表記)царизм/tsarizm ロシア語

デジタル大辞泉 「ツァーリズム」の意味・読み・例文・類語

ツァーリズム(〈ロシア〉tsarism/〈英〉czarism)

帝政ロシア専制君主支配体制。皇帝ツァーリ)が絶大な権力を持ち、貴族中心とした官僚国家機関化された教会とがそれを支えた。イワン4世時代(16世紀)に始まり、1917年ロシア革命崩壊

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精選版 日本国語大辞典 「ツァーリズム」の意味・読み・例文・類語

ツァーリズム

  1. 〘 名詞 〙 ( [ロシア語] carizm [英語] czarism ) 帝政ロシアのツァーリ(皇帝)による専制的支配体制。ツァーリが絶大の権力をもち、貴族が官僚としてこれを助け、教会もまた国家機関化された。イワン四世の時代に始まり一八世紀後半、エカテリーナ二世の時代に完成したといわれる。ロシア革命で崩壊。
    1. [初出の実例]「批判的リアリズムの作家たちがツアーリズムとの対決に進み出たのとちがって」(出典:原子力と文学(1954)〈小田切秀雄〉一)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ツァーリズム」の意味・わかりやすい解説

ツァーリズム
つぁーりずむ
царизм/tsarizm ロシア語

ロシア皇帝の専制支配とその体制。ピョートル1世(大帝、在位1682~1725)以降のロシアの歴代皇帝は、「インペラートル」の称号をとったが、イワン4世(雷帝、在位1533~84)以降ロシア革命までの皇帝を慣用的にツァーリtsar’とよび、16世紀後半以降のロシアの無制限専制支配およびその体制をツァーリズムとよぶ。ピョートル1世、アレクサンドル1世の下で支配機構が整い、立法、行政、司法の最高権限は皇帝に集中していた。専制支配の社会的支柱農奴制を基盤とする貴族(ドボリャンストボ)で、彼らが皇帝の官僚、軍隊、警察の幹部となった。

 農奴制に拠(よ)る専制は、西欧の絶対主義と著しく性格を異にした。専制支配の下では、国民の人権も成立しなかった。ツァーリズムの典型ともいうべきものはニコライ1世(在位1825~55)の時代で、現行体制を疑問視すること自体を重罪とする刑法の下で、警察国家が出現した。専制支配は19世紀後半以降しばしば危機に直面したが、「上からの改革」で対処した。1905年革命後のドゥーマ国会開設にもかかわらず、帝権の立憲的な制限は完全には実現せず、17年革命までツァーリズムが国民を支配した。

[伊藤幸男]

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百科事典マイペディア 「ツァーリズム」の意味・わかりやすい解説

ツァーリズム

帝政ロシアの専制君主権力。16世紀に始まる皇帝の正式称号ツァーリに由来。このころ確立した君主権力は,さらにピョートル1世の時期に絶対的なものとなったが,1905年革命で一定の制限を受け,1917年二月革命で打倒された。
→関連項目ポチョムキン号の反乱ロシア革命

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ツァーリズム」の意味・わかりやすい解説

ツァーリズム
tsarism

帝政ロシア (16~20世紀初) の専制政治体制のこと。農奴制を基礎にし,厳格な身分秩序と官僚制機構を骨格とした絶対君主制である。その特徴は,教会が国家機関化し,ツァーリに対して隷属的であった点,イワン4世 (雷帝)のときに大貴族 (ボヤール ) を徹底的に弾圧してツァーリに権力を集中した点である。このようなツァーリズムも,農奴解放 (1861) ,1905年の第1次革命などでその基礎を動揺させ,17年の十月革命によって最終的に打倒され,皇帝ニコライ2世の処刑をもってその幕を閉じた。

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旺文社世界史事典 三訂版 「ツァーリズム」の解説

ツァーリズム
tsarism

16世紀以降のロシア皇帝ツァーリの独特の専制的支配体制
その特徴は,皇帝が強い権力をもって貴族や文武の官僚を支配し,商業資本や教会が国家に隷属し,農奴制が19世紀後半まで存続した点にある。イヴァン4世(雷帝)が大貴族を抑え,地主貴族を保護したときに始まり,18世紀後半のエカチェリーナ2世の時代に極盛期に達した。1861年の農奴解放後もその特徴は残存し,1917年のロシア革命で崩壊した。

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世界大百科事典(旧版)内のツァーリズムの言及

【ツァーリ】より

…これには,当時モスクワ大公の権威の強化を望んでいたロシア教会の働きかけもあり,ツァーリは神意による地上の最高・絶対の統治者で専制君主とされた。1721年ピョートル1世がインペラートル(皇帝)を正式の称号としたが,この君主観はその後も,ツァーリの呼称の慣習的使用とともに変わらず,ツァーリの専制権力とその家父長的支配を意味するツァーリズム(ロシア語ではツァリーズム)の観念もそこから生まれた。きびしい自然条件と地主や役人の収奪に苦しむ民衆(ナロード)は〈神は高く,ツァーリは遠し〉としながら,全能の君主に対する期待から,早くに〈父なるツァーリ〉という観念を生み,すでに17世紀はじめのスムータ(動乱時代)で偽ドミトリーが現れたが,その後もプガチョフの乱をはじめ多くの機会に僭称者(せんしようしや)や偽勅書が出て,民衆の期待を集めた。…

【モスクワ・ロシア】より

…続くフョードル3世の代にかけて行政の制度化・官僚化と西方文化の浸透が進み,ソフィア・アレクセーエブナの摂政期を経て,ピョートル1世のもとでロシア帝国に移行した。
【専制の理念と実際】
 ロシア的専制(ツァーリズム)はモスクワ時代に生まれた。イワン3世は〈専制君主〉を称し,ときにツァーリの称号も使った。…

※「ツァーリズム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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