モール(読み)もーる

日本大百科全書(ニッポニカ) 「モール」の意味・わかりやすい解説

モール(Hugo von Mohl)
もーる
Hugo von Mohl
(1805―1872)

ドイツの植物学者。シュトゥットガルトの富裕な官吏の子として生まれる。チュービンゲン大学医学を学んだが、植物の顕微鏡的研究に興味を抱き、ベルン大学で生理学を講じたのち、1835年チュービンゲン大学の植物学教授となる。植物細胞が分裂によって増殖することを明らかにした(1835)。また植物細胞の細胞壁の内側に粘性物質があることをみいだし、プロトプラズマProtoplasma(原形質)とよんだ(1846)。この語は、1839年にプルキンエがつくったものであるが、モール以後広く用いられるようになった。生涯独身で、死ぬまで教授職にあった。没後、その講座はホフマイスターに引き継がれた。長兄は公法学者、次兄はオリエント学者として知られている。

[檜木田辰彦]


モール(手芸、織物)
もーる

(1)moor(オランダ語)
 細い針金を芯(しん)に、着色した繊維と別の針金を撚(よ)り合わせ、ビロード状の毛羽を立てたもの。工作、手芸装飾などに用いる。また、モール細工のアクセサリーなども市販されている。さらに、歯科医学の分野でも、モールでつくられた歯間部用歯ブラシがアメリカから輸入されており、歯科医や患者の間で好まれて使われている。

(2)mogol(ポルトガル語)
 モール織のことで、絹の紋織物の一種。経(たて)は絹糸で、緯(よこ)に金糸を用いたものを金モール、緯に銀糸を用いたものを銀モールとよぶ。モールとは毛虫の意味で、16世紀インドのムガル帝国で産した緞子(どんす)に似ている。繻珍織(しゅちんおり)、絵緯(えぬき)リボン状織物も、総括してモール織とよぶ。

[市川久美子]


モール(Christian Otto Mohr)
もーる
Christian Otto Mohr
(1835―1918)

ドイツの応用力学者。ホルシュタインのウェッセルブーレンで生まれる。ドイツ国営鉄道の建築技師を経て、シュトゥットガルト、ドレスデンの各工科大学教授を歴任、19世紀以来の静力学を体系化、整理し、図式解法に発展させた。なかでもトラスの図解力学およびクラペイロンの方程式(3連モーメント法)に著しい業績をあげ、梁(はり)の曲げに関するモールの定理、座屈理論におけるモールの応力円を創出した。ドイツにおける最初の名誉工学博士の一人。ドレスデンで没した。

[村松貞次郎・藤原恵洋]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「モール」の意味・わかりやすい解説

モール
Mohl, Julius von

[生]1800.10.25. シュツットガルト
[没]1876.1.3. パリ
ドイツの東洋学者。 1826~33年テュービンゲン大学教授。 26年フランス政府からペルシアの国民的叙事詩『シャー・ナーメ』の翻訳を委託され,その研究に生涯を捧げた (7巻,1838~78) 。 47年コレージュ・ド・フランス=アジア協会会長。主著『ゾロアスター教断片』 Fragments de la religion de Zoroastre (29) 。

モール
maul

ラグビーで,ボールを持った選手の周囲に敵味方各1人以上の選手が立ったまま密集しボールを奪い合っている状態をいう。攻める側にとっては,重要な攻撃の起点となる。ボールを持った選手を,近くにいる味方選手が楔を打つようにバインディングしてボールを確保する。モールを形成して巧みにボールコントロールしながら徐々に前進することをドライビングモールという。なお,ボールが地面にある場合の密集戦をラックという。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報