ヤコブセン(読み)やこぶせん(その他表記)Jens Peter Jacobsen

デジタル大辞泉 「ヤコブセン」の意味・読み・例文・類語

ヤコブセン(Jens Peter Jacobsen)

[1847~1885]デンマーク小説家同国における無神論自然主義文学の代表者。作「マリー=グルッベ夫人」「ニールス=リーネ」。

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精選版 日本国語大辞典 「ヤコブセン」の意味・読み・例文・類語

ヤコブセン

  1. ( Jens Peter Jacobsen イェンス=ペーテル━ ) デンマークの小説家。初め植物学を研究し、ダーウィンの翻訳などを行なうが、のち文学に専心し無神論の立場から自然と人間を客観的に描き出した。著「ニルス・リューネ」など。(一八四七‐八五

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヤコブセン」の意味・わかりやすい解説

ヤコブセン(Jens Peter Jacobsen)
やこぶせん
Jens Peter Jacobsen
(1847―1885)

デンマークの小説家。ユトランド半島の港町ディステズの裕福な商家に生まれる。コペンハーゲン大学で植物学を専攻、かたわらシェークスピア、ゲーテハイネキルケゴールフォイエルバハ傾倒、古い信仰を捨てて無神論を奉じる。この間ダーウィンにも傾倒し『種の起原』と『人類の由来』をデンマーク語に翻訳。このころから文学の道に進む決心を固め、まず中編小説『モーンス』(1872)を発表する。自然児として育った青年の愛の喪失と再生を描くこの作は、印象主義的タッチの清新さで、デンマーク文学に新紀元を開くものと評価され、ブランデスを中心におこった新文学運動の旗手となる。以後は、『マリー・グルッベ夫人』(1876)と『ニールス・リーネ』(1880)の2長編のほか、4、5編の短編を残したのみで、病弱の身を独身のまま閉じた。無神論の立場から人間の偉大さと卑小を追求する主題の追求力と、鏤骨(るこつ)の丹念な作風は死後いよいよ高く評価され、ことに詩人リルケが傾倒した。短編『フェンス夫人』は最後の作で、作者の人生の遺書ともいうべき名作。ほかに若干の詩がある。

[山室 静]

『山室静訳『ヤコブセン全集』全1巻(1975・青娥書房)』


ヤコブセン(Arne Jacobsen)
やこぶせん
Arne Jacobsen
(1902―1971)

デンマークの建築家デザイナー。コペンハーゲンに生まれ、同地に没。1928年コペンハーゲンの芸術アカデミー建築科を卒業。まもなくル・コルビュジエに代表される国際合理主義建築を目ざして活動を開始。33年、コペンハーゲン近郊のベラビスタ集合建築の設計で頭角を現し、続いてオーフス市庁舎(1938~42)を共同設計で完成、国際的に知られた。第二次世界大戦後は、スーホルムの住宅群の設計(1950~55)、さらにアメリカ建築の強い刺激によるコペンハーゲンのイェスペルセン・ビル(1955)、SASビル(1957~60)などがある。家具、銀器、テキスタイルなどのデザインにも優れた成果を示した。

[高見堅志郎]

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改訂新版 世界大百科事典 「ヤコブセン」の意味・わかりやすい解説

ヤコブセン
Jens Peter Jacobsen
生没年:1847-85

デンマークの作家。北ユトランドの港町ティステズの商家に生まれる。自然科学と文学に興味を覚え,学生時代植物学を専攻。淡水藻類の研究論文では金メダルを取る。《新デンマーク月刊》(1870-74)には自然科学者として執筆し,別にダーウィンの主要著書を翻訳して紹介に貢献した。その後,胸を病んで文学にのみ専心し,処女作《モーンス》(1872)を発表,一時代を画して自然主義文学の先達となる。すでに信仰上の違いから恋人とも決別し,〈キリスト教は一つの神話〉との言葉をもらしており,G.ブランデスを中心とする文学会に参加して新しい自由思想を作品に織り込む。長編《マリエ・グルッペ》(1876)は17世紀に実在した女性の一生を描いた人間の性の問題を,次の《ニールス・リーネ》(1880)では無神論のもつ問題をテーマとする。ほかに短編《ペルガモのペスト》(1881),《フェンス夫人》(1882)などがある。その繊細で優美な文体は,現代デンマーク文学が誇りうる最高の美文とみなされている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヤコブセン」の意味・わかりやすい解説

ヤコブセン
Jacobsen, Jens Peter

[生]1847.4.7. ユラン半島,ティステズ
[没]1885.4.30. ユラン半島,ティステズ
デンマークの小説家,詩人。富裕な商家に生れ,父は剛健な船乗りで事業家,母は芸術家肌の空想家。大学では植物学を専攻,ことに藻類の採集と研究に没頭し,卒業論文では金メダルを受けた。またダーウィンの進化論に傾倒,『種の起原』と『人間の由来』を翻訳。その頃信仰に動揺をきたし,キルケゴール,フォイエルバハらに傾倒,ついに無神論者を自認するにいたった。ブランデスの影響下に文学に転じ,晩年の 12年間結核と戦いながら作品を発表した。 1872年に出した短編『モーンス』 Mogensは清新な印象主義的タッチで世を驚かせ,早くも新文学運動の旗手と目された。代表作『マリー・グルッベ夫人』 Fru Marie Grubbe (1876) ,『ニールス・リューネ』 Niels Lyhne (80) ,『フェーンス夫人』 Fru Fønss (82) 。

ヤコブセン
Jacobsen, Arne

[生]1902.2.1. コペンハーゲン
[没]1971.3.24. コペンハーゲン
デンマークの建築家,インテリアデザイナー。デンマークの王立アカデミーで学び,古典的建築装飾に反対して,鋭い方形やガラスの壁面に特徴づけられた機能的建築を設計し,ミース・ファン・デル・ローエの造形を規範とし G.アスプルンド風の人間的あたたかみを組合せた建築表現を追求した。またインテリア,家具,照明デザインなどで知られ,1950年代から 60年代にかけて独創的なデザインを行なった。 1956年からはコペンハーゲンの王立アカデミーの教授をつとめた。作品はベラビスタ共同住宅 (1933,クランペンボル) ,スカンジナビア航空ビル (59,コペンハーゲン) ,オックスフォード大学のセント・キャサリン・カレッジ (64) ,ナショナル・バンク (65~72,コペンハーゲン) 。

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百科事典マイペディア 「ヤコブセン」の意味・わかりやすい解説

ヤコブセン

デンマークの作家。植物学を学び,ダーウィンに傾倒したが,のち,文学に専心し自然主義文学的作風に無神論的ヒューマニズムを包んで完成度の高い小説を書く。ある青年の愛と死と思想的遍歴をたどった《ニールス・リーネ》(1880年)のほかに《マリエ・グルッベ》など。

ヤコブセン

デンマークの建築家。コペンハーゲン美術学校教授。稲妻形のプランをもつクランペンボアの集合住宅などユニークな建築で知られるほか,室内・家具デザインの分野でも活躍。

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世界大百科事典(旧版)内のヤコブセンの言及

【ニールス・リーネ】より

…デンマークの作家ヤコブセンの代表作。1880年刊。…

※「ヤコブセン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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