日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヤコブセン」の意味・わかりやすい解説
ヤコブセン(Jens Peter Jacobsen)
やこぶせん
Jens Peter Jacobsen
(1847―1885)
デンマークの小説家。ユトランド半島の港町ディステズの裕福な商家に生まれる。コペンハーゲン大学で植物学を専攻、かたわらシェークスピア、ゲーテ、ハイネ、キルケゴール、フォイエルバハに傾倒、古い信仰を捨てて無神論を奉じる。この間ダーウィンにも傾倒し『種の起原』と『人類の由来』をデンマーク語に翻訳。このころから文学の道に進む決心を固め、まず中編小説『モーンス』(1872)を発表する。自然児として育った青年の愛の喪失と再生を描くこの作は、印象主義的タッチの清新さで、デンマーク文学に新紀元を開くものと評価され、ブランデスを中心におこった新文学運動の旗手となる。以後は、『マリー・グルッベ夫人』(1876)と『ニールス・リーネ』(1880)の2長編のほか、4、5編の短編を残したのみで、病弱の身を独身のまま閉じた。無神論の立場から人間の偉大さと卑小を追求する主題の追求力と、鏤骨(るこつ)の丹念な作風は死後いよいよ高く評価され、ことに詩人リルケが傾倒した。短編『フェンス夫人』は最後の作で、作者の人生の遺書ともいうべき名作。ほかに若干の詩がある。
[山室 静]
『山室静訳『ヤコブセン全集』全1巻(1975・青娥書房)』
ヤコブセン(Arne Jacobsen)
やこぶせん
Arne Jacobsen
(1902―1971)
デンマークの建築家、デザイナー。コペンハーゲンに生まれ、同地に没。1928年コペンハーゲンの芸術アカデミー建築科を卒業。まもなくル・コルビュジエに代表される国際合理主義建築を目ざして活動を開始。33年、コペンハーゲン近郊のベラビスタ集合建築の設計で頭角を現し、続いてオーフス市庁舎(1938~42)を共同設計で完成、国際的に知られた。第二次世界大戦後は、スーホルムの住宅群の設計(1950~55)、さらにアメリカ建築の強い刺激によるコペンハーゲンのイェスペルセン・ビル(1955)、SASビル(1957~60)などがある。家具、銀器、テキスタイルなどのデザインにも優れた成果を示した。
[高見堅志郎]