ヤナギムシガレイ(読み)やなぎむしがれい(その他表記)willowy flounder

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヤナギムシガレイ」の意味・わかりやすい解説

ヤナギムシガレイ
やなぎむしがれい / 柳虫鰈
willowy flounder
[学] Tanakius kitaharai

硬骨魚綱カレイ目カレイ科に属する海水魚。北海道南部以南の日本各地のほか、黄海渤海(ぼっかい)、朝鮮半島沿岸に分布する。体は長楕円(ちょうだえん)形で、著しく扁平(へんぺい)。上眼は頭の背縁に接し、下眼よりわずかに後ろにある。口は小さく、両顎(りょうがく)に門歯が連続して1列に並ぶ。側線胸びれ上方で湾曲しない。体色は有眼側は褐色で、胸びれと尾びれ後部は暗色。無眼側の体は白い。

 水深200~400メートル前後の砂泥底にすみ、おもに小形の甲殻類、多毛類、二枚貝、ヒトデ類など海底の小動物を食べる。産卵期は12~7月で、北ほど遅い。卵は油球のない分離浮性卵。孵化仔魚(ふかしぎょ)は全長約3.4センチメートル。1年で8センチメートル、3年で15センチメートル、5年で20センチメートルほどになる。最大体長は30センチメートルほど。底引網で多量に漁獲される。ほかのカレイ類に比べて、形や色合いに品があるうえ、脂肪が少なくて淡泊であり、干物として最高級品である。乾製品はワカサガレイやササガレイ名前で売られている。

 ヤナギムシガレイの名前は、体つきと色合いはムシガレイに似ているが、体が薄くて細くヤナギの葉のようであることに由来する。ヒレグロに似るが、ヤナギムシガレイは上眼が頭部背縁に接すること、無眼側の体は白いことなどで容易に区別できる。

[尼岡邦夫]


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改訂新版 世界大百科事典 「ヤナギムシガレイ」の意味・わかりやすい解説

ヤナギムシガレイ (柳虫鰈)
flounder
Tanakius kitaharai

カレイ目カレイ科の海産魚。北海道南部以南の日本各地に分布し,中国にも見られる。体は非常に側扁し細長く柳の葉のようであるところからこの名があり,同様に新潟,北陸,山陰ではササガレイという。体色は淡い褐色で,側線が両体側によく発達している。口が小さく,両眼間隔は狭い。産卵期は本州南部では1~4月,東北以北では6~7月である。卵は1.2~1.3mmの球形分離浮性卵で,卵膜表面に大型の網目状の模様が見られる。水温約12℃のとき,4日近くで孵化(ふか)する。孵化後1日ほどは水面近くに浮かんでいるが,その後自由に遊泳し,3~4日ころから小型のプランクトンを摂餌し始める。成魚では小型の多毛類などをおもに食べる。全長30cmに達するものもあるが,ふつうは20cmほどまでである。肉厚は薄いが,小骨もあまり気にならず,干物にして非常に美味である。橙色に透けて見える卵巣をもつものはとくに珍重される。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヤナギムシガレイ」の意味・わかりやすい解説

ヤナギムシガレイ
Tanakius kitaharae

カレイ目カレイ科の海水魚。体長 30cm内外。体はやや細長く薄い。頭,口ともに小さい。眼は体の右側にある。鱗は有眼側,無眼側ともに円鱗。側線は胸鰭近くで少し曲がる。有眼側は褐色。北海道以南,東シナ海,黄海ポー(渤)海に分布する。食用。

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栄養・生化学辞典 「ヤナギムシガレイ」の解説

ヤナギムシガレイ

 [Tanakius kitabarai].カレイ目カレイ科の海産魚で,食用にする.45cmほどになる.

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