ユスラウメ(その他表記)Nanking cherry
Chinese bush cherry
Prunus tomentosa Thunb.

改訂新版 世界大百科事典 「ユスラウメ」の意味・わかりやすい解説

ユスラウメ
Nanking cherry
Chinese bush cherry
Prunus tomentosa Thunb.

盆栽庭木または小型庭園果樹として利用されるバラ科の落葉低木。大きなものでは高さ3mになる。花は白色または淡紅色で,4月ごろに開花。葉は倒卵形,表裏ともに細毛が生えている。果実は2年枝につき,果梗がきわめて短い。6月ごろに桃紅色に熟す。多汁な液果状で,径1cmあまり,1個の核をもち,園芸上は核果類に属する。中国華北地方の原産。華北~華中地方や朝鮮で栽培されており,日本へは数百年前に渡来したといわれるが,その年代は不明。《農業全書》(1697)などに記載がある。果実が着色せず黄白色で熟する系統は白実ユスラウメという。類似の近縁種にはニワウメやオヒョウモモP.triloba Lindl.があり,いずれも叢状(そうじよう)の低木で庭木に利用する。ユスラウメは近年,モモの矮性(わいせい)台木としての利用が研究されている。生食のほかに果実酒の原料にも利用する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ユスラウメ」の意味・わかりやすい解説

ユスラウメ
ゆすらうめ
[学] Prunus tomentosa Thunb.

バラ科(APG分類:バラ科)の落葉低木。中国原産で、江戸時代初期から栽培されている。名は、移植に強いこの樹木を移し徙(うつ)し楽しむという朝鮮語の移徙楽(イサラ)から転じたといわれている。高さ2~3メートルになり、若枝に縮れた毛がある。葉は互生し、倒卵形、長さ5~7センチメートル、先は急にとがり、縁(へり)に細かい鋸歯(きょし)がある。表面は短毛があってしわになり、裏面葉柄には縮れた毛が密生する。4月、葉より先、または新葉と同時に白色または淡紅白色、径1.5~2センチメートルの花を開く。花弁は倒卵形で5枚、雄しべ多数で、雌しべ1本。果実は球形、径約1センチメートルの核果になり、表面に微毛があり、6月に赤く熟し、食べられる。品種に、果実が白く熟すギンユスラがある。陽樹で庭に植え、繁殖は実生(みしょう)、株分けによる。

[小林義雄 2020年1月21日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ユスラウメ」の意味・わかりやすい解説

ユスラウメ(梅桃)
ユスラウメ
Prunus tomentosa

バラ科の落葉低木。中国からヒマラヤにかけての原産で,古く日本に渡来し,現在は庭木として普通に植えられる。幹は2~3mでよく分枝し,樹皮は暗色,若枝に毛がある。葉は長さ5~7cmの倒卵形で先はとがり,縁には重鋸歯がある。葉柄は短く,短毛が密生する。4月に,葉と同時かやや早く,白色または淡紅色の小花を葉腋に1~2個ずつつける。核果は小球形,わずかに毛があり,径 1cmぐらいで赤く熟する。生で食べられ,甘ずっぱい味がする。

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百科事典マイペディア 「ユスラウメ」の意味・わかりやすい解説

ユスラウメ

中国原産のバラ科の落葉低木。江戸時代の初めに日本に伝来し,庭木とされる。枝はよく茂り,全体に開出毛がある。葉は倒卵形で長さ5〜7cm,先は短くとがり,縁に重鋸歯(きょし)がある。春,径約1.5cm,淡紅色,5弁の花を開く。果実は球形で6月に赤熟,甘ずっぱく,食用にされる。

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世界大百科事典(旧版)内のユスラウメの言及

【ニワウメ】より

…繁殖は株もとから出る枝を株分けのようにしたり,挿木や種子による。庭に植えられるユスラウメに似ているが,ユスラウメの花梗はごく短く,また倒卵形の葉の表には毛がある。【堀田 満】。…

※「ユスラウメ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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