ヨナ書(読み)よなしょ(英語表記)yônāh ヘブライ語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヨナ書」の意味・わかりやすい解説

ヨナ書
よなしょ
yônāh ヘブライ語
Jona ラテン語
The Book of Jonah 英語

旧約聖書』の十二小預言書の一つ。預言ヨナを主人公に仕立てた風刺的な物語で、広く親しまれている。ヨナは、異教の帝国の首都ニネベへ行って滅亡を預言するよう神の命令を受けるが、これに背いて船で逃げる。途中大嵐(おおあらし)となり、海中に投げ込まれたヨナが巨大な魚に飲(の)まれ、腹の中で三日三晩過ごしたくだりは有名である。ついにニネベに行き、預言すると、人々はみな悔い改めたので、神はこの町を滅ぼすのを思いとどまる。これを不満とするヨナは神に向かって怒る。神はトウゴマを1日で成長させ、その陰でヨナが涼むのを見るや、次の日にそれを枯らす。ふたたび激怒するヨナに、神は、ニネベの人々が滅びるのはなおさら忍びないことであると教える。本来の預言書とは異なる教訓的な書で、神の愛は広く異教徒にも及ぶことを語っている。

 捕囚期以後、イスラエルの宗教思想が急速に排他的な選民主義へ傾いていくことへの批判として、本書は重要な意味をもつ書といわれている。

[清重尚弘]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヨナ書」の意味・わかりやすい解説

ヨナ書
ヨナしょ
Book of Jonah

旧約聖書 12小預言書の一つ。預言はごくわずかしか含まれていず,むしろ教訓物語である。ヨナは神から,ニネベの人々に神の裁きを伝える使命を受けるが,反抗したため巨大な魚に飲み込まれる。彼は神に祈り,3日後に魚の腹から陸地に吐き出される。ヨナがニネベで 40日間,ニネベの崩壊を預言すると,王をはじめ人々は悪を悔い,祈りを捧げたため,神は憐れんで裁きを思いとどまる。ヨナは異民族に対する神のこの処置に不満をもつが,やがて神がニネベの人々を惜しむ気持を知り,神の慈悲の普遍的性格を悟る。

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