日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヨーカイ」の意味・わかりやすい解説
ヨーカイ
よーかい
Jókai Mór
(1825―1904)
ハンガリーの小説家。ロマン主義文学の傑出した作家。地方貴族の出で、法律を学んだが、20歳で最初の作品を発表して注目され、文学の道に進んだ。学生時代からペテーフィと親交を結び、1848年のブダペストの市民蜂起(ほうき)の際、ペテーフィとともに参加したが、その後の独立戦争においては、急進性に反対し、平和的解決を支持した。のちに、独立戦争に題材をとった『朴念人(ぼくねんじん)の息子たち』(1869)や『それでも地球は動く』(1872)などを発表し、この時期にもっとも活発な創作活動を行った。また新聞『祖国』を編集して、政治的見解を披瀝(ひれき)し、国会議員に選出された。作品はロマン主義が基調であるが、民衆的リアリズムの発展もみられる。ほかに『黒いダイヤモンド』(1870)、19世紀初めごろの世相を描いた『ハンガリーの大尽』(1853~54)といった歴史小説、社会小説などさまざまなジャンルにわたっており、しかも、100編以上を書くといった多作な作家であった。
[岩崎悦子]