小児にみられる急性脳症のひとつで、ウイルス感染が先行する場合と、薬剤との関連が指摘される場合がありますが、はっきりとした原因はわかっていません。
インフルエンザや
アスピリンの投与を受けていない小児でも、この病気は認められます。急性脳症の症状以外に特徴的なのは、肝臓の機能異常です。肝臓の生検(針で肝臓の一部を採取して調べる)をすると、顕微鏡で脂肪滴、脂肪変性が認められます。脂肪酸の代謝異常がその病態に関連しているといわれています。
また、ミトコンドリアの機能に異常がみられ、電子顕微鏡で見るとミトコンドリアが
かぜ症状に引き続いて起こることが多いとされ、発熱、下痢、嘔吐に引き続いて、けいれん、意識障害が急速に進行します。数日で死亡することもある重篤な病気です。治っても神経系の後遺症を残すことが多いため、予後は良好とはいえません。
臨床症状に加えて、血液所見では肝機能の異常、アンモニアの上昇、低血糖、乳酸の上昇、低ケトン血症などが認められます。
この病気に特異的な治療法はありませんが、ブドウ糖液を点滴で投与しながら、急性脳症に対する脳浮腫対策が中心となります。肝臓や腎臓の機能異常に対する治療も必要です。脂肪酸の代謝異常に対しては、Lカルニチンが投与されることがありますが、発症早期でないと効果は低いといわれています。
急激に発症することが多く、緊急に入院施設のある小児科への搬送が必要です。
予防としては、すべてのライ症候群を予防するものではありませんが、インフルエンザや水痘にかかった時は、アスピリンなどのサリチル酸系解熱鎮痛薬を15歳未満の患者さんへ投与しないことになっています。自宅での急な発熱の際に、他の人に処方されていた解熱薬や大人用の解熱薬(これらの成分を含んでいることがある)を絶対に使わないよう注意が必要です。
多屋 馨子
オーストラリアのライらが1963年に報告したもので、急性脳症に肝臓などへの脂肪の沈着を伴う病気です。ウイルス感染症(とくに水痘とインフルエンザ)に続発し、解熱薬として内服したアセチルサリチル酸(アスピリン)も誘因となって、脳と肝臓の機能障害を来します。乳幼児に多くみられますが、アスピリンの使用を禁じる警告が出てから発病数はかなり減りました。
原因は不明です。ウイルスや薬物が誘因となって全身のミトコンドリアが機能障害を来し、脳浮腫、高アンモニア血症、低血糖、脂肪の沈着が起きると考えられています。
かぜや水痘、インフルエンザ、下痢症の回復期に急性脳症の症状が現れます。発熱はありません。
重症例では
急性脳症にかかり、血液検査で肝臓酵素の上昇、高アンモニア血症、
入院して全身管理をしながら抗けいれん薬を使用し、
予後はさまざまですが、重症例の予後はよくありません。
急性脳症の初期症状がみられたら、救急車を呼んで小児科を受診してください。
千田 勝一
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
ウイルス感染症、とくにインフルエンザや水痘(すいとう)などにかかったあと、脳圧亢進(こうしん)と肝障害のために突然の嘔吐(おうと)、意識障害、けいれんなどをおこして生命が危険になる急性脳症の一型をいう。オーストラリアのシドニーにある小児病院の病理学者ライR. D. K. Reyeらが1963年に初めて報告した疾患で、原因は、インフルエンザや水痘等のウイルスのほか、薬物(サリチル酸等)が一因子として関係する可能性があるとされている。
発病は1~8歳の小児に多く、一般に病状の進行がきわめて急激なため、軽い上気道感染数日後、激しい嘔吐や意識障害、あるいはけいれんがおこる。肝機能障害が著明で血中アンモニアの増加、凝固異常、脳浮腫が生じる。早期発見、早期受診がたいせつで、ライ症候群の場合は救命処置の受けられる病院で治療を受けることが望まれる。
[山口規容子]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
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