改訂新版 世界大百科事典 「ラスカーシューラー」の意味・わかりやすい解説
ラスカー・シューラー
Else Lasker-Schüler
生没年:1869-1945
ドイツの女流詩人。エルバーフェルト(現,ブッパータール)の裕福なユダヤ人家庭に生まれる。結婚し一児を得て後離婚,ベルリンで文学活動に入る。文学的出発は,自然主義,ユーゲントシュティールの時代に属するが,その抒情詩は,神,民族,肉親,異性等への愛を,自然や宇宙にも通う深い憧憬と女性的感性で赤裸に歌い,現実と幻想が溶け合ったメルヘン風の散文作品とともに,内面表象に新境地を開いた。1932年クライスト賞を受ける。再婚の夫H.ワルデンに《シュトゥルム》誌創刊の契機を与えたり,作中人物のオリエント風男装で闊歩したり,尊敬する放浪の詩人ヒレPeter Hilleに習い,定住の習慣を廃するなど奇行とエピソードに富む文士でもあったが,西欧ユダヤ人としての苦悩と人類和解への悲願が,生涯の行動と表現の根本動機である。45年1月亡命先のエルサレムで死去。詩集《冥府の河》(1902),《わが奇跡》(1911),《ヘブライのバラーデ》(1913)などのほか,戯曲《ブッパー》(1909)および散文作品多数。
執筆者:瀧田 夏樹
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報