旧日米安全保障条約締結に伴って生じた,駐日アメリカ軍の日本国内とその周辺における権利その他を定めた日本とアメリカ両政府間の協定。1952年の旧条約3条に基づいて同年2月28日に調印,4月28日に発効した。正式名は〈日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第3条に基く行政協定〉。前文と本文29条からなり交換公文と議事録がついていた。その後60年の新日米安全保障条約下では,その6条に基づいて〈日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定〉として,60年6月23日,新日米安保条約と同時に発効した。旧協定と区別して新協定は,通常,日米地位協定と呼ばれる。前文と本文28条からなり交換公文と議事録がついている。
旧協定は,施設,区域の無償提供や物資,労務などの優先的調達,防衛分担金規定などを内容とし,とくに刑事裁判権について徹底した属人主義がとられ,アメリカ軍の将兵,軍属およびその家族については日本側にまったく裁判権が認められていなかった。また国民の権利義務に関する重要な内容を含みながら,国会承認の手続を経ない政府間合意による取決めとされるなど,多くの問題をもっていた。新協定ではこれらの点に配慮が加えられ,国会承認の手続を必要とする条約並みの扱いを受け,また刑事裁判権に関しても,施設,区域外の犯罪は,公務を除き日本が裁判権をもつという属地主義の原則が部分的に導入された。しかしそうした修正にもかかわらず,依然としてアメリカ軍部隊はなお税関検査免除の特権をもち,施設内の刑事裁判権は日本側がこれを放棄し,公務の軍人,政府職員の与える損害については,たとえ施設外であっても日本側は請求権をもたず,協議によって両国が損害を分担すると規定されている。また協定実施上,相互の協議を必要とする事項,とくに駐留軍が使用する施設,区域の決定,その他についての協議機関として日米合同委員会が設けられている。
→日米安全保障条約
執筆者:進藤 栄一
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日米安全保障条約(旧安保条約)の第3条にもとづきアメリカ軍隊が日本及びその付近に配備される際の条件を規定した日米政府間協定。1952年(昭和27)2月東京で調印。おもな内容は米軍使用の施設・区域の無償提供,輸入品の免税,物資・役務の調達,刑事裁判権,年額1億5500万ドル相当の円貨防衛分担金など。協定実施のため日米合同委員会を設置する。刑事裁判権に関しては米軍人・軍属家族が犯した犯罪についてはアメリカ側が専属的裁判管轄権をもったが,53年に改正が行われ,公務外の犯罪に対しては日本が裁判権をもつことになった。60年の新安保条約と日米地位協定の発効にともなって失効。
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…1945年のヤルタ協定は,ローズベルト大統領が行政協定の形式で締結したものであったが,権限乱用との批判をあびた。日米行政協定は,アメリカ軍の配備を規律する条件を定め,52年,日米安全保障条約と同時に発効した。日本政府は,この協定は日米安保条約の委任に基づく協定であるとして国会の承認を求めなかった。…
…英文名は前者がSecurity Treaty between Japan and the United States of America,後者がTreaty of Mutual Cooperation and Security between Japan and the United States of Americaである。前者にはアメリカ軍配備の条件を定める〈日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定〉(日米行政協定,1952年4月28日発効)および吉田=アチソン交換公文が付属し,後者には〈日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定〉(日米地位協定,1960年6月23日発効),および二つの交換公文,すなわち(1)条約第6条の実施に関する交換公文,(2)吉田=アチソン交換公文等に関する交換公文(岸信介首相とC.A.ハーター国務長官との間で作成・交換された)が付属している。
【条約改定と日米安保体制】
[旧条約の締結と内容]
1950年4月にアメリカ国務長官の政策顧問となったJ.F.ダレスは就任当初から日本の安全保障政策として占領軍の段階的撤退と日本再軍備の意図をもち,51年初の来日時に日本政府に再軍備を勧説した。…
※「日米行政協定」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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