ラテライト(その他表記)laterite

翻訳|laterite

デジタル大辞泉 「ラテライト」の意味・読み・例文・類語

ラテライト(laterite)

サバンナ地域に広くみられる、鉄・アルミニウム水酸化物に富む紅色の土壌。高温多雨のため岩石が著しく風化して生じ、植物養分に乏しく耕作に適さない。ニッケルの原料となるものもある。紅土。ラトゾル

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精選版 日本国語大辞典 「ラテライト」の意味・読み・例文・類語

ラテライト

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] laterite ) サバンナ気候の地域を中心に発達する赤褐色の土壌。鉄・アルミナなどが硬化し、風化してできたもの。紅土。
    1. [初出の実例]「ラテライトのひどい崖から 梯形第三のすさまじい羊歯や こならやさるとりいばらが滑り」(出典:春と修羅(1924)〈宮沢賢治〉風景とオルゴール)

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改訂新版 世界大百科事典 「ラテライト」の意味・わかりやすい解説

ラテライト
laterite

熱帯地方に広く分布する酸化鉄,アルミナ,カオリナイトに富む赤黄色の硬化した風化殻の名称。紅土(こうど)ともいう。硬化の程度により,手で容易にこわれる程度のカラパスcarapaceとつるはしでやっと砕ける程度のキュイラスcuirasseとに区別されている。インド南部で古代から建築材料に用いられてきたので,煉瓦を意味するラテン語のlaterにちなんでブカナンF.Buchananが最初に命名(1807)した。その後,多くの研究者により次のような異なった意味で用いられるようになり,混乱が生じた。(1)熱帯や亜熱帯に発達するケイ酸が少なく,鉄やアルミニウムの含水酸化物に富む残積成赤色土壌(ラテライト性土壌)。(2)カオリナイト,酸化鉄,アルミナに富む熱帯の風化生成物で,日光に当たって乾燥すると,不可逆的に硬化する物質(ブカナンのラテライト)。(3)熱帯に分布する硬化した含鉄質風化殻すなわち硬盤層で,主としてボーキサイトや含水酸化鉄からなる物質。

 このような概念の混乱を避けるため,今日ではブカナンが最初に〈ラテライト〉とよんだ物質はプリンサイトplinthite(煉瓦を意味するギリシア語のplinthosに由来)として再定義され,ラテライトという用語は硬化したプリンサイトに限定して用いられるようになってきている。このようなラテライトの概念の変遷と関連して,ラテライト化作用やラテライト性土壌の意味内容も変化している。

基礎的土壌生成作用の一つで,最初はハラソビッチH.Harasovizにより,アリット化作用とよばれた(1930)。湿潤熱帯気候下では生物の活発な活動により有機物が急速に分解され,ケイ酸塩鉱物は激しく風化を受けて塩基を急速に放出する。そのため土壌内を浸透する水の中には有機酸が乏しく,弱酸性ないし弱アルカリ性が保たれる。その結果,塩基やケイ酸が強度に溶脱され,鉄やアルミニウムの含水酸化物が残留して相対的に富化する作用に対して,ラテライト化作用という用語が用いられた。しかしラテライトの形成過程,すなわちプリンサイトが硬化してラテライトとなる過程との混同を避けるため,最近では土壌生成作用を示す用語としてはあまり用いられず,その代りに鉄アルミナ富化作用と呼ばれるようになってきている。

湿潤熱帯に広く分布する土層の厚い赤色味の強い土壌。風化と鉄アルミナ富化作用を強く受けやすい風化性鉱物はほとんどなく,粘土はカオリン質で酸化鉄,アルミナの相対的富化が特徴的である。粘土は酸化鉄,アルミナで被覆されているため粘土の移動,集積はみられない。風化殻としてのラテライトと区別するために,ケロッグC.E.Kelloggはラトソルlatosolと呼ぶことを提案(1949)した。アメリカ合衆国の新分類によるオキシソルOxisols,FAO/UNESCO分類のフェラルソルFerralsolsなどにほぼ相当する。
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岩石学辞典 「ラテライト」の解説

ラテライト

主として鉄およびアルミニウムに富む土壌のこと.この語は最初にブキャナンがインドのマドラスの建築材料に用いた[Buchanan : 1807].インドでは,マラヤラ(Malayala)の基盤をなす花崗岩の上部に位置し,層理は見られず,大きな塊として広がったものである.これには空洞や隙間が非常に多く,赤色や黄土色の鉄を非常に多量に含んでいる.塊の中には空気は排除され,柔らかいので何かの鉄製の道具で容易に切ることができる.斧で四角に切出すことができ,大きなナイフで思いどおりの形に切ることができる.ただちに煉瓦のように非常に堅くなり,空気や水に対する抵抗性はインドで見られるどんな煉瓦よりも良くなる.ラテライトはインド,タイ,および亜細亜で建築材料として広く使われているので,煉瓦石(brickstone)と記述されていることがある.ブキャナンは煉瓦石とラテライトは共に区別せずに用いた[Buchanan : 1807].この語は次第に広く使われ,様々な酸化鉄に富む赤色あるいは赤味がかった二次的な堆積物に用いられた[Walter : 1889].さらにこの語は土壌学者によて熱帯地方の風化作用の地帯で形成された土壌の型として使用され,多くの土壌の分類に使われている.ラテライトは,Fe2O3パーセント[Fermor : 1911]および水酸化物のパーセント[Lacroix : 1913]によって分類されている.アレキサンダーらは,ラテライトを二次的な酸化鉄,アルミナに富み風化の進んだ物質として記載している.これはほとんど塩基と一次的な珪酸塩にが欠けているが,多量の石英とカオリナイトが含まれている[Alexander & Cady : 1962].ラテン語のlaterは煉瓦の意味.

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百科事典マイペディア 「ラテライト」の意味・わかりやすい解説

ラテライト

紅土とも。おもに熱帯に分布する赤色の風化生成物で,主として酸化鉄,酸化アルミニウムからなる。地表または浅い部分に特有のハチの巣状ないし鉱滓(こうさい)状構造をもつか,豆石状の酸化鉄結核に富む膠(こう)結層を形成する。インド南部のものは空気にふれた当初は柔らかく,任意の形に切り出せるが,まもなく煉瓦のように固くなるので,建築用石材として利用されている。その成因は,湿潤熱帯気候下の強烈な風化作用(ラテライト化作用,今日では鉄アルミナ富化作用という)の結果,塩基やケイ酸の大半が溶解流失し,酸化鉄と酸化アルミニウムが残留してできたという説と,高温で地表からの蒸発が盛んなためアルカリ性の地下水に溶出した母岩中の鉄,アルミニウム成分が,断面中を上昇し酸化沈殿して集積したという説とがある。これらはかなり長い地質的時間を必要とする過程で,今日みられるラテライトの大半は鮮新世に生成したとする説もあり,隆起準平原の指標とされることもある。湿潤熱帯ないし亜熱帯降雨林下で著しい風化作用をうけ,カオリン鉱物,鉄やアルミニウムの(含水)酸化物に富む赤色の砕けやすい土をラテライト性(赤色)土と呼ぶ。概念の混乱を避けるため,今日ではF.ブカナンが最初にラテライトと命名(1807年)した物質はプリンサイトとして再定義され,硬化したプリンサイトをラテライトという。
→関連項目ケイ(珪)ニッケル鉱ボーキサイト

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラテライト」の意味・わかりやすい解説

ラテライト
らてらいと
laterite

サバナ地域で、地表付近にれんがのように固まった鉄・アルミナの集積物。紅土ともいう。熱帯地方の高温多雨気候のもとで風化が十分に行われると、土壌の母材中の主要な成分であったケイ酸塩類が分解されてケイ酸が分離流下し、鉄・アルミニウムの酸化沈積物がほとんど土壌の全層を占めるようになる。サバナでは雨期に激しい加水分解によってカリウムやカルシウムの塩基類が完全に溶脱したあと、乾期に土壌水分の急激な上昇がおこり、地表付近に鉄やアルミニウムの三二酸化物が集積する。これが固い盤層を形成しクラスト(殻)となって、ラテライトとよばれる物質となる。鉄酸化物がヘマタイト(赤鉄鉱)であれば赤みの強いれんが状の塊で紅土ともよばれるのにふさわしいが、アルミニウムの含量が多いものは灰褐色を呈している。

 ラテライトは土層内に生じた土壌物質の一つであるが、植物養分を欠き、耕作を不可能にする固い膠着(こうちゃく)物で、開発の障害となるが、その固さを利用して建築材料に用いたのがインドなどでの習慣であった。アルミニウムに富む場合はボーキサイトとよばれる鉱床となり、インド、東南アジア、アメリカなどのアルミニウム資源の産地を形成している。

[浅海重夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ラテライト」の意味・わかりやすい解説

ラテライト
laterite

紅土ともいう。熱帯地域に分布する赤褐色の土壌。地表の風化物として生成された膠結物質で,鉄とアルミニウムの水酸化物を主成分とし,ケイ酸分や塩基類の溶脱作用を経て生じた。主要構成鉱物は針鉄鉱,ギブス石,ベーム石,ダイアスポア。インドシナ半島,インド,キューバなど雨季の明瞭なサバナ気候地域に広く分布。やせ土で農耕には障害となるが,インドではラテライト土壌である赤土を切って乾燥して煉瓦をつくるが,ラテライトの語源はこの煉瓦という意味のラテン語 Laterに由来する。

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世界大百科事典(旧版)内のラテライトの言及

【土壌型】より

…なお西南日本の暖温帯地域に広く分布している赤色土は,過去の地質時代(更新世)の亜熱帯的気候条件下で生成した赤色土が残存した古土壌である。 年間を通じて高温・多湿な熱帯雨林気候帯ないし熱帯モンスーン気候帯に広く分布している成帯性土壌型はラテライト性赤色土である。この土壌はラトソル,フェラルソル,鉄アルミナ質土壌などともいわれ,アメリカの土壌分類体系ではオキシソル目に包含されている。…

※「ラテライト」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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