オルゴール(読み)おるごーる

デジタル大辞泉 「オルゴール」の意味・読み・例文・類語

オルゴール(〈オランダ〉orgel)

小曲を自動的に演奏する装置小箱などに組み込んだもの。表面に針を植えつけた円筒円盤ぜんまい仕掛けなどで回転し、順次その針が音階板に触れて音を出す。自鳴琴じめいきん
歌舞伎下座げざ音楽楽器の一。1音色を模したもので、大きさの異なるりんを3~5個木板にとりつけたもの。2本の貝撥かいばちで打つ。天界の音を表すときなどに用いる。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「オルゴール」の意味・読み・例文・類語

オルゴール

  1. 〘 名詞 〙 ( [オランダ語] orgel )
  2. 手回しやぜんまい仕掛けで回転する円筒につけた刺(とげ)で、音階順に並んだ金属製の櫛(くし)の歯をはじいて小曲をかなでる玩具。小箱、置時計などに装置され、日本には江戸時代末期に渡来自鳴琴。風簫(ふうしょう)
    1. [初出の実例]「時辰儀(とけい)自鳴箏(オルゴル)の発絛(ぜんまい)」(出典:舎密開宗(1837‐47)四)
  3. ( おるごうる ) 歌舞伎囃子(ばやし)の楽器。大小の音色のちがった念仏用のリンを、三、四個木の板にとりつけ、二本の貝ばちで打って、のような音色を聞かせる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オルゴール」の意味・わかりやすい解説

オルゴール
おるごーる

手回しやぜんまいで小針のついた円筒を回転させ、金属の櫛(くし)形の音階板をはじいて美しい音楽を奏でる自動演奏装置。ヨーロッパでは、19世紀にフランスの人形師ジュモーなどがこの機械装置をセットしたオルゴール人形を作製し、音色にあわせて人形の持つ鳥籠(とりかご)の中の小鳥も歌いながら動き回るものなどが現れた。20世紀後半に、円筒のかわりに鋼鉄に曲をプレスし、演奏するディスク(円盤)型が発明され、最盛期を迎えた。

 日本には江戸時代に渡来、1750年(寛延3)刊の『紅毛訳問答』に「オルゴル」とある。オランダ語のオルゲル(orgelオルガンの意)からきたといわれ、訳して「自鳴琴(きん)」「風簫(ふうしょう)」ともよんだ。1830年(天保1)刊の『嬉遊笑覧(きゆうしょうらん)』(喜多村信節(きたむらのぶよ)著)にその構造が紹介されているが、1852年(嘉永5)には江戸・深川で、オランダ渡りのチャルゴロの名で見せ物になるほど珍しがられた。国立科学博物館には、嘉永(かえい)年間(1848~1854)に時計師小林伝次郎がつくったオルゴール付き置き時計がある。玩具化されるようになったのは明治中期からで、日露戦争前に輸入品をまねて製作され始め、ハンドルを回転させながら鳴らす最新流行の音楽玩具として愛好された。また、これをさらに簡略化した新型のがらがらが考案され、明治末期から出回った。これは、筒状のボール紙の中に鋼鉄製の針金数本を植え付け、柄(え)を持って振ると、振り子が針金に当たって音を響かせるもので、これもオルゴールの名で登場し、乳幼児向きの玩具として迎えられ、現在もみられる。

 最近つくられているものは、置き時計、手箱、シガレット・ケースなどにしかけたものなどで、箱の蓋(ふた)をあけると鳴り出すものが多い。また乳児向きのベッドメリーにも応用されている。

[斎藤良輔]

『名村義人著『オルゴールの詩』(1984・音楽之友社)』


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「オルゴール」の意味・わかりやすい解説

オルゴール

18世紀末にスイスの時計製作者たちによって考案された一種の自動演奏器具。オランダ語orgelの転訛。英語ではミュージカル・ボックスという。金属のピンを植えた円筒を回転させ,これで音階音を発するくし状金属片をはじいて音楽を奏でる。ピンを円板に植えたものも用いられた。19世紀前半中ごろには,ばね仕掛けのない手回し式のものが玩具として作られるようになり,世界的に広がっていった。日本にもこのころ伝来し,自鳴琴の字をあてた。高級なものはトレモロ演奏や小型のドラムセットやベルなどの伴奏も加えられ,また何曲もの連続演奏のできる精巧なものが出現した。現在では手箱や時計などにしくまれる小型のものが広く普及しており,日本も主要な製作国となっている。他に,振ると筒の中の金属棒が澄んだ音を発する〈がらがら〉の一種の玩具や,板の上に仏具の鈴の大小を並べて取り付けた下座(歌舞伎囃子)用楽器がオルゴールと呼ばれている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「オルゴール」の意味・わかりやすい解説

オルゴール

18世紀にスイスの時計製作者たちによって考案された一種の自動演奏器具。orgel(オランダ語)からの転化語。英語ではミュージカル・ボックスという。もと自鳴琴の字を当てた。箱の中に金属板をくし形にとりつけ,それに接して多くのとげのついた円筒を装置し,円筒がぜんまい仕掛で動くと,とげが金属板をはじいて一定の旋律を奏でる。日本への伝来は江戸末期。→カリヨン

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オルゴール」の意味・わかりやすい解説

オルゴール
orgel

歌舞伎囃子などに用いられる金属製の体鳴楽器。音高の異なる小さな椀型のきん (ベル) を,音高順に3~5個,横に並べて板に取付けたもの。柄のついた木製の球型の桴 (ばち) で鳴らす。

オルゴール
orgel

オランダ語の「オルガン」。本来はピンを植えた円筒をハンドルで回して演奏する自動オルガンをさしたが,その装置を応用して金属製の爪を発音させる小型の自動楽器を意味するようになった。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

仕事納

〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...

仕事納の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android