改訂新版 世界大百科事典 「ラブレース」の意味・わかりやすい解説
ラブレース
Richard Lovelace
生没年:1618-58
イギリスの宮廷詩人。ケントに広大な所領をもつ名門に生まれ,オックスフォード大学を出て,チャールズ1世の宮廷に仕えた。1639年には王のスコットランド遠征に従い,ピューリタン革命勃発後も王に変わらぬ忠誠をささげた。ために2度も投獄の憂目にあい,フランスに亡命し,家産を没収されるなど,辛苦をなめつくし,王政の回復を待つことなく,極貧のうちに死んだと伝えられる。作品のうち戯曲は失われたが,2度の投獄生活中に書いた抒情詩は,17世紀宮廷詩の白眉と呼んでよい。その多くは〈リュカスタ〉と彼が呼んだ恋人にあてたもので,そのモデルとなった女性は彼の亡命中,彼の死が伝えられたため,他の男性と結婚してしまった。《出陣にあたってリュカスタにささぐ》は12行の短詩で,宮廷風の機知が,武人としての決意と恋人としての感傷を,なめらかな措辞にまとめあげた名詩である。
執筆者:川崎 寿彦
ラブレース
Robert Lovelace
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報