ラブレース(英語表記)Richard Lovelace

改訂新版 世界大百科事典 「ラブレース」の意味・わかりやすい解説

ラブレース
Richard Lovelace
生没年:1618-58

イギリスの宮廷詩人ケントに広大な所領をもつ名門に生まれ,オックスフォード大学を出て,チャールズ1世の宮廷に仕えた。1639年には王のスコットランド遠征に従い,ピューリタン革命勃発後も王に変わらぬ忠誠をささげた。ために2度も投獄の憂目にあい,フランスに亡命し,家産を没収されるなど,辛苦をなめつくし,王政の回復を待つことなく,極貧うちに死んだと伝えられる。作品のうち戯曲は失われたが,2度の投獄生活中に書いた抒情詩は,17世紀宮廷詩の白眉と呼んでよい。その多くは〈リュカスタ〉と彼が呼んだ恋人にあてたもので,そのモデルとなった女性は彼の亡命中,彼の死が伝えられたため,他の男性と結婚してしまった。《出陣にあたってリュカスタにささぐ》は12行の短詩で,宮廷風の機知が,武人としての決意と恋人としての感傷を,なめらかな措辞にまとめあげた名詩である。
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ラブレース
Robert Lovelace

イギリスの小説家S.リチャードソン書簡体小説《クラリッサClarissa》(1747-48)に登場する放蕩者。ラブレースは貴族伯父にもち家柄を誇るが,成上りの中産階級の娘クラリッサ・ハーローに目をつけ彼女を誘惑しようとする。彼は万策を講じて自分の欲望を遂げようとし,美貌貞淑で知られるクラリッサを売春宿に閉じ込め,ついに薬物を用いて目的を遂げ,クラリッサは傷心のあまりに死ぬ。ラブレースは典型的な〈女たらし〉の代名詞となっている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ラブレース」の意味・わかりやすい解説

ラブレース
Lovelace, Richard

[生]1618. ウリッジ
[没]1657. ロンドン
イギリスの詩人。王党派詩人の一人。ケントの豪家に生れ,オックスフォード大学で学んだのち,廷臣として活躍。内乱に際して共和派によって投獄され,のちフランスに逃れたが,やがて帰国して再び投獄され,釈放後は貧窮のうちに死んだ。獄中から恋人に寄せた『ルーカスタ』 Lucasta (1649) など,優雅な作品で知られる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラブレース」の意味・わかりやすい解説

ラブレース
らぶれーす
Richard Lovelace
(1618―57?)

イギリスの詩人。17世紀のいわゆる王党派詩人を代表する一人。オックスフォード大学卒業後宮廷に仕え、ピューリタン革命の期間中は議会派によりしばしば投獄されたが、最後まで国王支持の立場を変えず、窮乏のうちに死んだ。叙情詩集『リュカスタ』(1649)は、幾編かの優れた短詩を含み、哀切な感情を甘美な措辞に盛り込んでみせている。『続リュカスタ』(1659)は没後の出版。

[川崎寿彦]

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