ラロシュフーコー(その他表記)François Ⅵ, duc de La Rochefoucauld

精選版 日本国語大辞典 「ラロシュフーコー」の意味・読み・例文・類語

ラ‐ロシュフーコー

  1. ( François duc de La Rochefoucauld フランソワ=デュク=ド━ ) フランスモラリスト。セビニエ夫人ラファイエット夫人らと親交があり、人間の営為の底にある自我愛、利己心、偽善を、厭世的な目から辛辣(しんらつ)にえぐった「箴言集」を著わした。(一六一三‐八〇

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改訂新版 世界大百科事典 「ラロシュフーコー」の意味・わかりやすい解説

ラ・ロシュフーコー
François Ⅵ, duc de La Rochefoucauld
生没年:1613-80

フランスのモラリスト。由緒ある大貴族の子としてパリに生まれる。14歳で結婚,15歳で軍務につき,当時の軍人大貴族の例にもれず,あるいは戦場で戦闘に,あるいは宮廷で恋愛と政治的陰謀に明け暮れる日々を送る。ルイ13世治下では宰相リシュリューに対する数々の陰謀に関係し,一時バスティーユに投獄され,追放処分を受ける。リシュリューの死(1642)後,宮廷に戻るが,フロンドの乱が起こると愛人ロングビル公爵夫人とともに反乱軍に身を投ずる。しかし52年,サンタントアーヌの攻防重傷を負い,以後戦闘から遠ざかる。翌年帰順し,59年には年金を受け,宮廷との関係も回復するが,国王ルイ14世の信頼をかちうるには至らず,失意無聊の日々をサロンでの会話,読書,思索で慰めた。とくにサブレ夫人のサロンの常連となり,またラファイエット夫人とは親密な友情で結ばれた。夫人が《ザイード》と《クレーブの奥方》を書くにあたっては助言と協力を惜しまなかったといわれる。作家としての彼の名声を高めたのは,1664年に出版され,その後絶えず加筆訂正を加えられ,生前に5版(最終版は1678)を重ねた《箴言集》である。サブレ夫人とジャック・エスプリとの格言のやりとりから生まれた本書は,当時のサロンで流行していた格言の形式に,鋭い心理分析とペシミスティックな人間観察を盛りこんで衝撃を与えた。〈われわれの徳行たいていの場合,偽装した悪徳にすぎない〉というエピグラフに象徴されるように,著者は人間の高貴な感情の大部分が自己愛すなわちエゴイズムと非合理的な情念に支配されていることを容赦なく暴きだす。比類なき明晰さと簡潔で正確極まる表現を備えた本書は,モラリスト文学の傑作である。ほかに自らの見聞した宮廷の権力闘争,とくにフロンドの乱の立役者たちの暗躍を活写した《回想録》(1662)を残した。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ラロシュフーコー」の意味・わかりやすい解説

ラ・ロシュフーコー
La Rochefoucauld, François, duc de

[生]1613.9.15. パリ
[没]1680.3.16/17. パリ
フランスのモラリスト。フランス屈指の大貴族の家系に生れ,しばしば政治的陰謀に利用され,リシュリュー公と争ったり,フロンドの乱に参加したりの波乱の半生をおくったのち,1653年失意のうちに隠退生活に入った。スキュデリー嬢やサブレ夫人のサロンに出入りし,ラファイエット夫人やセビニェ夫人と親交を結んだ。当時のサロン,特にサブレ夫人の周辺で流行していた,知的遊戯ともいうべき「格言」に手を染め,名高い『箴言 (しんげん) 』 Réflexions ou Sentences et Maximes morales (1665) を著わした。そこでは簡明直截な表現で,人間の本質がうがたれている。ほかに『回想録』 Mémoires (62) がある。

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百科事典マイペディア 「ラロシュフーコー」の意味・わかりやすい解説

ラ・ロシュフーコー

フランスのモラリスト。大貴族の出身。宰相リシュリューに対する陰謀に荷担,投獄された。またフロンドの乱に反乱軍の一員として参加,敗れて引退した。《箴言集》(1664年)は明晰・簡潔な文体で人間のエゴイズムを突き,失意の政治生活で深められたペシミズムを反映する。〈われわれの美徳は大方偽装された悪徳である〉。他に《回想録》(1662年)など。ラファイエット夫人との友情も有名。

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とっさの日本語便利帳 「ラロシュフーコー」の解説

ラ・ロシュフーコー

世間は、人物の値打ちそのものよりも、ややもすれば、値打ちがありそうに見える人に報いがちだ。\ラ・ロシュフーコー
フランスのモラリスト(一六一三~八〇)。

ラ・ロシュフーコー

あまりにも性急に恩返しをしようとするのは、一種の忘恩行為だ。\ラ・ロシュフーコー
フランスのモラリスト(一六一三~八〇)。

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世界大百科事典(旧版)内のラロシュフーコーの言及

【サブレ夫人】より

…後年,自身もサロンを開き,特にジャンセニスト系の人々が集まり,思想,文学を論じた。短い文の中に鋭く真理をえぐるマクシム(格言)を書くのが流行したのはこのサロンであり,サブレ夫人自身も《格言集》(1678)を印刷しているが,特にラ・ロシュフーコーの名高い《箴言(しんげん)集》が,このサロンでの論議から生まれたことが注目される。【福井 芳男】。…

【サロン】より

…この時期には,パリをまねた地方都市のサロンも多くなった。17世紀にはそのほか,ラ・ロシュフーコーの《箴言集》や,J.deラ・フォンテーヌの《寓話》を生み出したサブレ夫人のサロン,多少軽佻な趣があったスカロン夫人Mme.Scarron(1635‐1719。のちのマントノン夫人marquise de Mantenon)のサロンなどがあり,17世紀末には自由思想家(リベルタン)たちを集めたニノン・ド・ランクロNinon de Lenclos(1620‐1705)のサロンも出現した。…

※「ラロシュフーコー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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