インド北西端、グジャラート、ラージャスターン、ハリアナ各州からパキスタン国境に広がる砂漠。大インド砂漠Great Indian Desertともいう。東はアラバリ山脈、西はインダス川に接する。年降水量500ミリメートル以下のステップ(短草草原)と、250ミリメートル以下の砂漠気候地域からなる。全体に起伏が小さく、63%が砂丘に覆われる。ステップ地域には沖積地に河川水と地下水による灌漑(かんがい)が発達し、キビ、豆類を主作物とする耕地が広がり、交通も発達し、ヒサール、ジョドプルなどの都市があり、周辺にはダニとよばれる農村集落が点在する。一方、砂漠地域には、ジャイサルメルやビカネールなどの都市もあるが、人口希薄地で、北東―南西方向の最高60メートルの縦列砂丘が顕著である。サンバール湖をはじめ塩湖が多く、塩の生産地となり、地下資源は石灰、鉛、亜鉛、大理石、石材などが豊富である。パキスタン国境近くには、ヒマラヤの水を引くラージャスターン灌漑用水路(インディラ・ガンディー運河)が建設された。
[成瀬敏郎]
インド亜大陸北西部を占める砂漠。インド砂漠Indian Desertともいう。タールは〈砂の荒地〉の意。南のカッチ湿地から北のパンジャーブ平原までの延長は640km,西側のインダス川低地から東側のアラーワーリー山脈までの幅は360kmで,その大半はインドのラージャスターン州にあり,残りはパキスタンにある。基盤としてインド亜大陸の結晶質岩石が横たわると思われるが,砂,シルト等の細粒物質からなる砂丘がほとんど全域に分布する点に特徴があり,西半分はインダス川下流部から吹き上げられた砂が風の方向に細長く堆積した現成砂丘であるが,東半分は現在移動していないバルハン型(三日月状)の固定砂丘である。平均年降水量は300mm以下,しかもその30%以上が年ごとに増減する不安定さである。固定砂丘地帯の凹地には草が比較的よく生えるので,牛,羊,ヤギ,ラクダ等が飼われ,集落が点在する。インド政府はパキスタン国境に近い砂漠を開発するため,ヒマラヤ山麓から延長525kmの幹線水路で水を引くラージャスターン灌漑水路計画を1957年から進めており,その完成によって砂漠の様相は一変するであろう。
執筆者:藤原 健蔵
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