日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロート油」の意味・わかりやすい解説
ロート油
ろーとゆ
Turkey red oil
19世紀の中ごろに、赤色の天然染料であったトルコ赤(アリザリン)によるまだら染めを防ぎ、均一な染色を得るために用いられた薬剤。トルコ赤油ともいうが、初めはオリーブ油を硫酸で処理したものが用いられたので硫酸化油sulfonated oilともいう。1875年ころに、ひまし油の硫酸化油が現れてから主流はそれにかわった。1928年以降に新しいいくつかの合成界面活性剤が登場するまでは、せっけんを除いて唯一の界面活性剤として、長い間繊維工業で用いられてきた。現在でも酸性染料の染色助剤としてのほか、農薬の乳化剤・分散剤あるいは植物を用いた皮革のなめし助剤に用いられている。
[早野茂夫]